「みちのくの仏像」特別展を見学する
2015年 03月 05日
3月4日は、桜が満開になる季節のような陽気でした。
思い立って上野公園へ出かける。
さすがにまだ桜の花は咲いていない。
東京国立博物館では「みちのくの仏像」特別展が開催中。
1月14日に始まり、4月5日まで開かれている。
東北6県を代表する仏像が集結、
26点ほどの仏像が出展されている。
平泉中尊寺の仏像群は含まれていない。
東北地方にも多くの魅力的な仏像が祀られているが、
中尊寺を別にして、なかなか訪れる機会がない。
東北で仏像が本格的につくられるようになったのは
平安時代に入ってから。
この地では仏教が土地の神を取り入れながら広がった。
土地の神は、豊穣をもたらす一方、
時に容赦のない現実を突きつける存在、
厳しい自然環境の中で暮らす人々は、
仏像に土地の神の姿を重ね、生活の安寧を祈り、
仏像を大切に守ってきた。
宮城・双林寺の薬師如来立像。
像高は119.4センチ、平安時代、9世紀の木像。
重要文化財。
ケヤキ材から彫り出されている。
福島会津・勝常寺の薬師如来坐像および両脇侍立像。
薬師如来の像高は141.8センチ、
日光菩薩の像高は169.4センチ、
月光菩薩の像高は173.9センチ、平安時代、9世紀の作。
薬師三尊ともに、平成8年に指定された、
彫刻分野では東北初の国宝。
東京では、平成12年の「日本国宝展」以来の公開。
薬師如来像の前に立つと、その全身に
あふれるような力を感じる。
太づくりの体からは圧倒的なボリューム感、
落ち着きのある堂々とした風格を誇っている。
脇侍の日光・月光菩薩立像は、
優美に腰をひねって立つ姿。
いずれも、ケヤキの一木造りである。
岩手・黒石寺(こくせきじ)の薬師如来坐像。
重要文化財に指定されている。
像高は126.0センチ、平安時代、貞観4年(862)の作。
大変厳しく、威厳のある表情と姿。
カツラ材の一木造り。
制作年が明確で、日本の彫刻史上大変重要な作品。
同時に展示されている両脇侍像は時代が新しく、
12世紀の作とされている。
岩手・成島毘沙門堂の伝吉祥天立像。
像高は176.0センチ、平安時代、9世紀の作。
大変美しい像で、瞑想しているような眼からは
静けさが伝わってくる。
ケヤキの一木造りだが、木目が非常にきれいだ。
自然の美がそのまま表れている。
頭上には2頭の像が彫られている。
岩手・毛越寺の訶梨帝母(かりていも)坐像。
像高は34.0センチ、平安時代、12世紀の作。
訶梨帝母は、一般には鬼子母神と呼ばれる。
この仏は女性で、左手に子供を抱き、
子供の顔は丸く、小さな右手を握っている。
山形寒河江・本山慈恩寺の十二神将立像。
重要文化財であり、今回は四躯の像が出展されている。
丑神の像高が88.7センチ、
寅神の像高が88.5センチ、
卯神が91.8センチ、酉神が93.4センチ、
鎌倉時代、13世紀の作品である。
薬師堂内に、本尊の薬師如来とともに祀られる。
宮城・給分浜観音堂の十一面観音菩薩立像。
重要文化財。
像高は289・5センチと、本展示会で最も高い像。
鎌倉時代、14世紀の作。
鎌倉時代後期の仏像の特徴がよく表れている。
卵形の顔に、やや大きい目、鼻、口が表わされ、
髪筋や飾りは細かく彫られている。
3メートル近い巨像だが、一本のカヤで造られている。
4年前の東日本大震災の折、牡蠣の養殖で知られる給分浜にも
大津波が押し寄せたが、
観音堂は高台にあり、この像は難を逃れた。
円空仏が3躯、出展されている。
青森・西福寺の地蔵菩薩立像。
像高は145.0センチ、総高は175.0センチ、
江戸時代、17世紀の作。
奥行は15センチしかなく、背面は彫刻されず、平らなまま。
横から覗くとそれとわかる。
西福寺には、ほぼ同じ大きさの十一面観音菩薩立像も祀られている。
板に浮彫りのように彫ったとみられ、細かなところも彫刻。
青森・常楽寺の釈迦如来立像。
像高は125.9センチ、総高は145.9センチ、
江戸時代、17世紀の作。
円空作品としては、例のないほど写実的と言われる像。
秋田・龍泉寺の十一面観音菩薩立像。
像高は161.0センチ、総高は191.5センチ、
江戸時代、17世紀の作。
厚さ15センチ程に加工されたスギの板に彫刻。
木の性質を残そうとする意図がうかがえる。
細い目や笑ったような口は、生涯を通じて
彫られた円空仏に共通した特徴である。
復興の一助になればと、この特別展が開催される。
本展による収益の一部は、被災した東北の文化財の
復興に充てられる。
なお仏像の写真は、目録からスキャンさせていただいた。