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朝井 まかて著「福袋」を読む

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朝井まかてさんの著書「福袋」を読む。
講談社時代小説文庫、780円+税。
書名の「福袋」をはじめ、8点の短編小説集である。

「ぞっこん」は面白い書き方となっている。
「吾輩は筆である」といった感じで、筆の語りにより、
主人公が描かれる。
この筆の最初の持ち主は「画師御前」と綽名された名工で、
三禮堂と号した三代目鳥井清忠。
歌舞伎看板の画師でありながら勘亭流の文字を能くした御仁。
御前のもとに妙な男が日参し、使い古した筆があったら譲ってくれと頼みに。
私である筆は神田豊島町の藁店に住む、貧乏くさい職人のもとにやられてしまう。
裏長屋に住む職人、栄次郎の仕事場で、筆の立場から物語は展開する。
墨をたっぷり吸って、ハネるトメるのと、まさに筆の喋りだ。
栄次郎は寝る間も惜しんで精進、寄席看板の名手となる。
江戸町民の生き様が見事なまでに描かれている。

歌舞伎の大部屋役者と、その贔屓客となった謎の七味売りとの、
舞台上の大博打を描いたのが「千両役者」。
湯屋に生まれ育ったお晴ちゃんは家業が好きで、
八面六臂の頑張りぶりをが描かれた「晴れ湯」。
古着屋の娘、あやめが黒地に千筋の白が走った縦縞の帷子を着つつ、
莫連流の生き方から学び成長していく「莫連あやめ」。

そして「福袋」(第11回舟橋聖一文学賞を受賞している)。
大喰らいの出戻りの姉、お壱与(いよ)に目を付けた佐平。
お壱与の底なしの胃袋と鋭敏なる舌の大活躍により福が齎される。
夜の花火に照らし出された、草むらの中の男と女、
深く交わりながらも、じっとこちらを見据えてくる
男の眼差しを描いた女枕絵師、おようの物語「暮れ花火」。

四角四面の堅物家主(いえぬし)が、
神田祭のお祭掛になってしまい、一世一代の大勝負を、
町の賑わいとともに描く「後の祭」。
女たちに袖にされまくりながらも、その日暮らしの卯吉と寅次、
もらい物が二人の人生の分岐となる「ひってん」。
ひってんとは「貧乏長屋」の事である。

時代は幕末、江戸庶民の悲喜こもごもの生活が
著者の筆致により見事に描かれている。





by toshi-watanabe | 2019-09-12 14:19 | 読書ノート | Comments(0)

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