人気ブログランキング | 話題のタグを見る

大島 真寿美著「渦(うず)」を読み終える

大島 真寿美著「渦(うず)」を読み終える_d0037233_09315461.jpg


大島真寿美さんの最新作「渦(うず)」を読み終える。
この書籍を購入したのは数か月前、先月読み始めたところ、
第161回直木賞を受賞とのニュースが流れた。
大島さんにとって2度目の候補で受賞されたようだが、
直木賞受賞作品というのも納得がいく力作だ。
文芸春秋出版、1,850円+税。
サブテーマとして、「妹背山婦女庭訓 魂結び
(いもせやまおんなていきん えんむすび)」とある。

江戸時代中期、場面は大阪道頓堀。
儒者で操浄瑠璃(あやつりじょうるり)の芝居小屋、竹本座と関係に深かった
穂積以貫(これつら)の息子がこの小説の主人公、近松半二である。
本名は穂積成章、子供の頃から父親のお供で竹本座へ出かけ、
操浄瑠璃を目にし、自然と浄瑠璃の世界に。
父親は近松門左衛門と親交があり、門左衛門が生前大事にしていた硯を
戴き、その硯を息子の成章(近松半二)に渡す。

成章は近松門左衛門から直接指導を受けてはいないが、
師と仰ぎ、竹本座で操浄瑠璃作者として腕を磨いていく。
物語の中盤辺りに、「渦」という章がある。
当時歌舞伎や浄瑠璃が演じられる中心地は道頓堀、
道頓堀という混然となった渦から作者も演じる者も出てくるのやと、
登場人物に言わせている。

成章の幼友達に和泉屋という菓子屋の倅、久太がいた。
二人は良く連れ立って芝居小屋をのぞきに出かけ、
久太はすっかり歌舞伎の世界に夢中になる。
やがて泉屋正三、そして並木正三(しょうざ)として
歌舞伎作者として名声を博し、歌舞伎の隆盛に貢献する。

すっかり歌舞伎の影になり落ちぶれて行く操浄瑠璃の
復興を願い、近松半二が仲間や弟子とともに書き上げたのが、
「妹背山婦女庭訓」である。
評判をとったこの人形芝居は、歌舞伎でもその後演じられる。
現在も、文楽や歌舞伎で演じられている。
五段から成り立っているが、四段目に登場するのが、
三輪山のふもとにある酒屋の娘「お三輪」。
この小説、全体を話し言葉で通しているのが特徴で、
物語の終盤は、「妹背山婦女庭訓」が主題となっているのだが、
「お三輪」に語らせている部分が何回か出てくる。
大変面白い構成、書き方である。

大島さんの作品を読んだのは、この小説が初めてだが、
今後どんなテーマで書かれるのか興味がある。
お薦めの作品であるのは間違いない。





by toshi-watanabe | 2019-08-08 09:32 | 読書ノート | Comments(0)

日々見たこと、 感じたこと、気づいたことをメモする


by toshi-watanabe