内田 康夫著「隠岐伝説殺人事件」を読み終える

内田康夫さんの著書「隠岐伝説殺人事件」上・下二巻を読み終える。
1989年に刊行された作品で、この5月に光文社より、
文庫本として発刊されたばかり。
上巻:560円*税、下巻:600円+税。


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百を超える難事件を解決した名探偵、浅見光彦の最初の事件簿は、
1982年に刊行された「後鳥羽伝説殺人事件」だが、
第82代天皇、後鳥羽天皇をテーマにしている。
天皇を譲位した後、20数年にわたって上皇として院政を執り、
鎌倉幕府の混乱に乗じて倒幕を試みた。
しかし失敗、「承久の乱」により出家の上、隠岐の島に配流となった。
後鳥羽上皇は島で19年間、鎌倉幕府への恨みを抱きつつ過ごし、
島を二度と出ることはなく命を全うした。
後鳥羽上皇に纏わる数々の伝説が隠岐の島には残されている。

浅見光彦は、大学教授を筆頭とする後鳥羽上皇遺跡調査団の
一員に加わり、隠岐中ノ島へ向かう。
「旅と歴史」の藤田編集長からの依頼で、記録係として光彦は参加。
空の旅が苦手の光彦、他の団員と共に航空便で米子空港(出雲空港?)へ。
更にプロペラ機に乗り、島後の隠岐空港へ。
空港からタクシーに乗り港へ行き、フェリーに乗り、
目的地、海士町のある中ノ島へ向かう。
日本国内とはいえ、目的地に到着するまで、かなりの時間が掛かる。

隠岐の島、名前とどのあたりに位置するのかは知識があったが、
一度も訪れたことはなく、この著書を読んで、はじめて島のことがよく分かった。
隠岐は「島後(どうごと読む」と「島前(どうぜん)」の二つに分けられ、
更に「島前」は「中ノ島」、「西ノ島」、「知夫里島(ちぶりじま)」の
三つの島からなる。
四つの島と数多くの小島からなる隠岐諸島というべきだろうか。

調査団の個性ある5人のメンバーのうち、3人が遺跡発掘調査に当たり、
光彦とカメラマンは、観光も兼ねて島内を動き回る。
例の如く、次から次と事件が起こる。
団長格の教授が不慮の死を遂げ、
事故ではなく殺人ではと推測されるのだが。
この教授だけでなく、他にも何人かが亡くなり、殺人事件の疑いが生じる。
光彦も容疑者扱いされてしまうが、身元が分かり放免される。

後鳥羽上皇の存在を背景に、作者は色々な仕組みを考える。
島に漂う怨念、源氏物語絵巻という小道具、
旧日本陸軍の要塞、毒ガスなどという本当にあったような作り話が
出てきて、物語を大変面白くしている。
国宝の「源氏物語絵巻」は名古屋の徳川美術館と
東京世田谷区の五島美術館が保存しているが、
完璧にそろっているわけではない。
この作品に登場するように、
ひょっとして、国宝級の絵巻がこの世に出てきたらと思ったりする。


















by toshi-watanabe | 2018-06-05 09:25 | 読書ノート | Comments(0)