諸田 玲子著「元禄お犬姫」を読み終える
2018年 05月 30日
諸田玲子さんの最新作「元禄お犬姫」を読み終える。
とても面白い読み物である。
書名の通り江戸時代、徳川五代将軍綱吉の治世で、
貞享4年(1987)、綱吉により出された「生類憐れみの令」が
時代背景となっている。
元禄8年(1695)、江戸の西部、中野の地に
「お囲(おかこい)」(犬小屋)が設けらた。
次第に広げられ、ついには30万坪に及び、
10万匹以上ものお犬様の面倒を見ていたという。
因みに現在は、中央線の中野駅から高円寺駅にかけての
広大なエリアで、中野区役所など中野区の中心地である。
中野で犬小屋支配の助役を勤めているのが森橋弾正右衛門。
父親と兄は中野を離れるわけには行かず、
森橋家の娘、知世は、母親。佐知の療養のために、
祖父、森橋善右衛門と弟。善次郎と共に小石川の剣術稽古場を営む
堀内家の離れに移り住む。
知世は、どんな獰猛な犬でも手名付けてしまうことから、
「お犬姫」と呼ばれている。
家族や道場の人々との語らいとともに、
色々な、特に犬に纏わる事件が周囲で起こる。
「お犬姫」の活躍の場面が登場する。
元禄時代と言えば、「赤穂浪士の討ち入り」。
元禄14年(1701)旧暦3月、浅野内匠頭は江戸城松之大廊下にて、
吉良上野介吉央に斬りかかり、刃傷事件を起こす。
浅野内匠頭は即日切腹、播州赤穂藩浅野家は改易、城明け渡しとなる。
そして大石内蔵助をはじめとする四十七士が
元禄15年旧暦12月(1702年ではなく1703年の1月)
吉良邸に討ち入り、主君の恨みを晴らす。
元禄16年旧暦2月(1703)、
赤穂浅野家の浪士四十七人は切腹を果たす。
この小説も、赤穂浪士の事件とともに幕を閉じる。
物語の中には、赤穂浪士の不破数右衛門、堀部弥兵衛、
大高源吾なども登場。
当時芭蕉の門弟、宝井其角が江戸の俳諧の世界では隋一の俳人として
知られていたが、大高源吾は、其角とは俳諧での交流があった。
「お犬姫」のモデルがあったのかどうかは知らぬが、
こういう女性を主人公に登場させて、
元禄時代の世相と共に物語が進行、
大変興味深い内容となっている。