内田 康夫著「神苦楽島(かぐらじま)」を読む
2018年 05月 12日
内田康夫さんの著書「神苦楽島」を読む。
「追悼内田康夫」として最近、上下巻2冊、祥伝社文庫として出版された。
上下巻ともに、670円+税。
文芸春秋より単行本として出されたのは平成22年3月。
初版からすでに8年経っている。
浅見家では、母親の雪江による「ケータイ禁止令」が
徹底していたのはご存知の通り。
理由は、「携帯電話は家族の繋がりを阻害する」というものだ。
雪江としては、携帯電話は家族一人一人を孤立させる結果を招く、
と考えていた。
車での移動が頻繁な次男坊、浅見光彦については、
雪江は特例として、自動車電話を認めていたが、
自動車電話はケータイではない。
さて、雑誌「旅と歴史」の新連載が始まることが決まり、
編集長の藤田からケータイを持つように指示が出た。
光彦はケータイを所有したいと母に伝えると、雪江はあっさりと
「そう、そうしなさい」頷いた。
光彦も拍子抜け。
ということで、浅見光彦探偵がケータイを所有する、
記念すべき最初の作品である。
小説の序文として、「古事記」からの引用が掲げられている。
ここに登場する、一つの島が現在の淡路島である。
作品名となっている「神苦楽島」とは作者が付けた島の名前で、淡路島のこと。
淡路島での殺人事件、そして淡路島縁の人物の殺人事件が起き、
光彦は事件に巻き込まれて行く。
終盤、危うい目に合う光彦は、ケータイのお陰で命拾いする。
この作品で特に興味深いのは、「太陽の道」という言葉、
今回「太陽の道」のことを初めて知る。
仏像撮影をはじめ古美術の撮影で知られる、
写真家の小川光三(こうぞう)さんが初めに提言したもので、
古くから言われているものではない。
北緯34度32分のライン上に、東は伊勢の斎宮跡から西方に
大和の三輪山、箸墓、室生寺、長谷寺、大神神社、当麻寺、
さらに二上山を越えて聖徳太子廟、大鳥神社、
そして淡路島の伊勢久留麻神社、石上神社と続く。
太陽の進む、一直線上に並んでいる。
「太陽の道」に目覚めた、ある人物が「陽修」の理念を発意。
熊野や伊勢山中での一千日に及ぶ荒行を経て、
神意を感得するところがあり、自らの神格を高め、陽修会を立ち上げた。
一種の宗教団体である。
作品では、この陽修会がキーワードとなっている。
建築業界、そして有力政治家が、陽修会に絡んできており、
殺人事件の裏には、政界、業界関係のトラブルがあるのではと
小説は進展するのだが、最後は極めてありふれた殺人事件と判明する。
どちらかと言えば、読者の期待を裏切るような結末になったのが残念。
小説の舞台となった淡路島、
残念ながらまだ一度も訪れていない。
由緒ある寺院や神社、大変興味深い所も多く、
機会があればぜひ訪れてみたい。
いつもたくさんの小説を読まれて、あらすじも書いて下さって、嬉しいです。
それに感化されて、amazon注文が増えました。
我家は読み終わると娘に送るようになりました。
今回も興味津々な本ですね。
早速コメントをいただき有難うございます。
内田康夫さんの作品、まだまだ読んでいないのがありますので、再販本が出ると買い求めて読んでいます。
単に推理小説というだけでなく、色々な地方の歴史と文化も語られていますので、その点大変興味があります。
図書館で文春文庫版を読みましたが、淡路島の歴史についても
書かれていて興味深かったです。
岩屋に明石から船で行った事があります。
何もないのですが、金田一耕助も岩屋から淡路島へ行っているので。