霧島 兵庫著「信長を生んだ男」を読み終える

d0037233_11132916.jpg



霧島兵庫さんの「信長を生んだ男」を読み終える。

霧島さんは新人作家である。

20回歴史群像大賞優秀賞を受賞され、

2015年、「甲州赤鬼伝」でデビュー。

「信長を生んだ男」は二作目、書き下し作品である。

新潮社より刊行、¥1,600+税。


尾張の武将、織田信秀には男子が12人、女子が2人と

子沢山に恵まれたが、正室の土田御前との間に生まれたのは、

信長、信行、信包、秀孝の男4人とお市の方とされている。

この小説では長男の信長と次男の信行が主人公

(次男、三男という説も)、

そして信長の妻となるまむし斎藤道三の娘、帰蝶が絡んで

物語は進行する。


うつけ者と呼ばれた三郎信長は母親からは疎まれる一方で、

弟の勘十郎信行は母親に可愛がられる。

兄弟二人の性格は全く正反対、お互いに相容れず、

兄は弟をけなし、弟は兄を嫌う時代が続く。

父親は死に際に信長を後継者に指名する。

その後、信行が初陣での働きを機に、

二人の絆が結ばれるのだが、その場面が見事に描かれている。

兄が猛虎なら、己は兄を支える龍になると弟は心中誓う。


上総介を名乗り、天下を狙う信長は次第に非情さが消え、

甘さ弱さを露呈するのを目にした信行は、

兄が「非情の王」となるよう、

家老の柴田権六(のちの勝家)の助けを借りながら、

織田家に尽くす武将と裏切るのではと思われる武将の

洗い出しをするために、色々仕掛けを施す。

時には形の上では信長に対して謀叛を起こす作戦も

信行は敢えてとったりする。

頭のいい信長は、そのあたりのことは感づいている。

信長の若い時にはよい相談相手であった叔父も追いやり、

信長の家老も窮地に追い込むなど、

多くの犠牲者を出しながらも、信行の戦は続く。

信行としては、形式的にでも謀叛を起こした己を

見せしめに処分して欲しいのだが、

すっかり優しくなった信長はあっさりと許してしまう。

これでは織田家の統率が乱れてしまうと、

信行は言いたいのだが、それを知りつつ

信長は手を下さない。


父親同様に重い病に苦しむ信行は、己の寿命が

とだえるのを覚悟し、最後の手段に出る。

帰蝶と信行の死をもって、物語は幕を閉じる。

信行の死後、柴田権六は信長に仕え、勝家として織田家に尽くす

信行の遺児、坊丸は立派な若武者に成長、

権六のよき指導を得て、津田信澄という武将となる。


信長の妻となった帰蝶は、史実がほとんど残っておらず、

色々な説が出ている。

若くして亡くなったという説がある一方、最近では、

信長の死後も長く生きながらえたという説が広まっている。

以前は濃姫として小説に登場していたが、

近頃は帰蝶として登場しているのが多い。

諸田玲子さんが帰蝶を主人公に、「帰蝶」を書かれている。


霧島兵庫さんの作品、初めて読んだが、実に素晴らしい。

何か所か出てくる盛り上がりの場面には、

すっかり感動してしまう。

兄弟の情愛と葛藤、巧みに見事に描かれている。

力作であり、大型新人と言えるのでは。

これからの作品が楽しみである。






by toshi-watanabe | 2018-02-14 11:17 | 読書ノート | Comments(0)