内田 康夫著「鯨の哭く海」を読み終える

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内田康夫さんの作品「鯨の哭(な)く海」を読み終える。
名探偵・浅見光彦シリーズの一冊だが、
珍しく「。。。。。。。殺人事件」ではなく、「鯨の哭く海」という
作品名となっている。
とはいえ、埼玉県の秩父と和歌山県の太地で起きる、
殺人事件の物語である。


この小説は2001年に祥伝社から出版されて以来、
文庫本としても何度か出されている。
今回初めて角川文庫として出版された。
2018
1月発行、720円+税。


書名の通り、鯨の話が一つのテーマを構成している。
浅見家の夕食の場で、鯨を食べる話が話題になる。
光彦の姪に当たる智美(高校1年生)が突然、
「日本人は鯨を食べるの?」と聞く。
光彦の母親(智美にとっては祖母)の雪江は言う。
「昔は戴きましたよ。 わたくしばかりじゃないのよ。
あなたのお父様、陽一郎さんも、

それに和子さんも召し上がったでしょう。」
和子は智美の母親で、浅見家長男陽一郎の妻だが、
「そうよ、学校の給食に必ずと言っていいくらい、
クジラが出ましたもの、竜田揚げとか、大和煮とか。」

戦後は給食でクジラのベーコンなども出されていた。

現在はクジラと言えばウォッチングの対象となっており、

若い世代では食用とは思っていないのだろう。
鯨に関してはこれだけジェネレーションギャップがある。


例の如く、「旅と歴史」の藤田編集長から、渋谷にある
鯨料理の店(実際に現在も営業している)に誘われ、

鯨をテーマに原稿を書くように依頼される。
真実なのかどうかは不明だが、藤田は語る。
「ある調査によると、世界中の人類が1年間に食う水産物は

およそ9千万トン、その一方クジラが捕食する海洋資源は

28千万トンから5億トンと言われている。
しかもクジラは毎年4パーセント増殖しつつあるので、
このまま放っておくと、やがて人類の食う水産物は逼迫してしまう。
したがって商業捕鯨を再開し、適正量のクジラを

捕獲しなければならない。」
この辺りも含めて日本人と鯨について調査を依頼される。

この小説の書かれた後、米国やオーストラリアの動物愛護団体の
反捕鯨活動は活発化した。
日本の調査捕鯨船を邪魔したシーシェパートや
グリーンピースなど良く知られている。

また2009年には和歌山県太地のイルカ漁批判を
テーマに映画「ザ・コーヴ」を制作、全世界に公開し、
翌年にはアカデミー賞を受賞。
続編を企画中とか最近報道を目にした。


浅見光彦は、出張手当をいただき、和歌山県太地町へ出かける。
「太地」は「たいじ」と読み、本州の南端、紀伊半島の東部に位置する。
古式捕鯨の発祥の地である。
現地を見て回るうちに、6年前に若い男女が海に飛び込んだ事件の

話を耳にする。
警察では心中として一件落着となっているのだが、
光彦は疑問を感じる。
「くじらの博物館」を見学中、謎の女性を目にし、
更に女性がじっと見ていた先には、勢子船の模型が置かれ、
模型にある15人の漁師の一人(船首で銛を備えた勢子)に、
銛が突き刺さっており、光彦は唖然とする。


6
年前の数年後に、若者が背中に銛を突き刺されて殺害された

事件があり、 未解決のままとなっていた。

博物館で目にしたことがすでに現地で起きていたのだ。
光彦は二つの事件に接点を見つけ出し、推理を働かせる。
心中と処理された事件は実は殺人事件だと推理した
光彦は現地の警察に働きかけながら、解明をしようとする。
心中事件の女性の方は地元の女性、
男性の方は秩父出身の新聞記者だった。
二人は女性の両親の反対を押し切って結婚の約束。
銛で背中を突き刺されて死んだ男性はこの女性に
結婚を迫ったことがあると、こうした背景が明らかに。


ところが、今度は秩父で殺人事件が発生する。
事件の連続なのだが、事件の解明される中での、
太地における捕鯨の話など、 鯨に関連する話が大変興味深い。
明治11年(1878)に起きた「大皆美流れ」という事件、初めて知る。
当時、暫く不良が続いていたため、
母と子供連れのクジラは捕獲しないというしきたりを破って、
太地の漁師たちは海へ出漁する。

捕獲したものの、母親クジラは必死に暴れ、
しかも天候不順で海はあれており、船は転覆、
100
名以上の漁師が亡くなるという悲劇があったようだ。

事件の解決につながる推理と共に鯨の話、

大変興味深い作品である。










第2回プラチナブロガーコンテスト



Commented by 名無し at 2018-04-16 14:50 x
余計なお世話かもしれませんが、父親の名前が、陽一郎となっています、正しくは秀一のはずです。

智美の父親が洋一郎となっています、正しくは陽一郎のはずです。
Commented by toshi-watanabe at 2018-04-17 09:02
名無しさん、
コメントをいただき有難うございます。
またご指摘をいただき恐縮です。
浅見光彦の父親は確かに秀一ですが、陽一郎だとはどこにも書いておりません。
智美の質問に対して、祖母の雪江が答えて、「あなたのお父様、陽一郎さんも。。。」の部分を指しておられるのでしょうか。

智美の父親が洋一郎、これは完全に変換ミスです。後でチェックしたつもりでしたが、ミスしてしまいました。
訂正しておきます。


Commented by 名無し at 2018-04-20 13:56 x
私の間違いです失礼しました、私もこの本は読みましたそれなのに勘違いをするとは、ただややこしい作品だった記憶が有ります、確か浅見(あさみ)は秩父市に在る浅見家(あざみけ)を訪問する、そこで浅見(あざみ)との会話で、自分の兄と和歌山県警本部長の吉野(酒が飲めない好物は羊羹)の2人が東大生の時、目の前の浅見(あざみ)の教え子だった事を初めて知った。また最後の方で浅見家(あさみけ)の原則の1つを知りました、大晦日は家族揃って除夜の鐘を聞く、それまでは浅見家(あさみけ)の朝食はパンしか知りませんでした。
浅見(あさみ)個人の苦手なものは、高い所・お化け幽霊・絶対にしない事、雨の中傘を差して歩く事は知っていました、また旅先でよく食べるのはラーメンとカレーは知っていました。
Commented by toshi-watanabe at 2018-04-20 14:48
名無しさん、
ご理解いただき有難うございます。
名無しさんも、だいぶお詳しくて、内田康夫ファンでしょうか。
Commented by 名無し at 2018-04-26 12:02 x
内田康夫、特に浅見と竹村ファンです、ですからあなたのサイトを含め色々な人の浅見サイトを観ています、そこで間違った書き込みを発見すると、つい余計なことかも知れませんが指摘してしまいます、例えば、麻美光彦・浅見満彦・朝見光彦・水田豊・北村一輝・榎本孝明などです、ただし指摘しても逆切れして来る人もいます「面白ければ何でもいいんだ」と絶対に訂正しない、1番多い間違い浅見サイトの半分以上が、兄の職業(肩書)が「警視庁刑事局長」、原作者は元長野県知事の田中康夫、それに付随して、警視庁刑事部長・警視総監・警察検事局長・警察庁長官等もあり、これらデタラメ肩書の弟ならまだしも息子の書き込みも有ります、また田中康夫じゃないよ、内田裕也だよ、筒井康隆だよ、等も有ります、光彦は名探偵コナンの円谷光彦のパクリだ等も、もっと沢山ありますが書ききれないので。ただ原作本にも、内田康夫公認ホームページにも間違いは有ります、それも多いので別の枠に書き込みします。
Commented by 名無し at 2018-05-02 14:24 x
原作本の間違い、陽一郎の娘の名前が智美(さとみ)と智美(ともみ)の作品がある、ヒロインの名前が本沢(ほんざわ)と本沢(もとざわ)の作品がある、旅と歴史の編集長の名前が、藤田ではなく春日になっている作品がある、浅見光彦の解説本として「浅見光彦の秘密」と「浅見光彦の真実」の2冊が発売されたが、その中にも五ケ所位間違いがあります、その中の1つ浅見家の間取りが載っていますが、以前紹介された間取りと違います(リフォームしたとか説明はありません)
浅見のおかしな行動、私は理解できない、これは緊急を要するグズグズしていたらヒロインの命が危ないと判断した浅見は、陽一郎に連絡して岐阜県警に出動して貰おうと、車から飛び出して公衆電話を探して街中を走り回る、浅見は母親の影響で長い期間携帯電話を所持していませんでした、ただ今では珍しい当時最先端の自動車電話が愛車のソアラには付いていました、何故使用しない?①故障していた②料金滞納で止められていた③圏外だった、日頃母親に結婚もしないで高級車に乗っていると嫌味を言われているので①と②はすぐに対処するはず③は街中でしたので。
ホームページの間違い、俳優名・村井邦夫→村井国夫・沢村一輝→沢村一樹・佐藤浩一→佐藤浩市
今はこのホームページはありません、浅見と陽一郎と母親にふさわしい俳優はというアンケートでした。
Commented by toshi-watanabe at 2018-05-07 13:53
名無しさん、
色々とご指摘をいただき、なるほどと読ませていただきました。
「友の会」のメンバーでしょうか。
私の場合は、途中から読み始めましたので、最初のころの作品は、再販が出た時に買い求めて読んでいる次第で、未読の作品がまだ多くあります。
すっかり内田作品のファンになりましたので、これからも読み続けていくつもりです。
テレビドラマも時々あるようですが、ほとんど観ていません。
何度か観たのですが、主人公のイメージに違和感があり、あまり面白くなかったので、その後は観ていません。
色々とご教示有難うございました。
by toshi-watanabe | 2018-02-04 14:35 | 読書ノート | Comments(7)