内田 康夫著「鳥取雛送り殺人事件」を読む

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内田康夫さんの著書「鳥取雛送り殺人事件」を読み終える。

最近出たばかりの新装版、中公文庫、680円+税。

内田さんは現在、療養中の身で、著作からは遠ざかっている。

新作は全然手掛けておられない。

最初のころの作品はほとんど読んでいないので、

新装版が出るたびに買い求めて読んでいる。

ご存知浅見光彦シリーズの一作で、

最初にノベルス版で出版されたのが19912月、

初期の作品に属す。

過日、読んだばかりの「龍神の女」で登場したのが、

和歌山市加太の神事として名高い、

淡嶋神社の雛流し。

今回の作品で登場するのは、鳥取市用瀬(もちがせ)で

行われている雛送りの行事である。

一つ気が付いたのは、通常、光彦シリーズの作品では、

「プロローグ」と「エピローグ」が書かれているのに、

本作品ではいずれもない。

事件が起こりそうな状況、或いは事件の発生を予感させる

前文が無くて、いきなり本文に入るのは珍しいのでは。

偶々早朝、新宿の花園神社界隈を取材中の光彦は、

神社の境内で、頭の下に桟俵(さんだわら)という

藁細工が敷かれた死体を発見する。

傍の植え込みから凶器と思われる漬物石ほどの大きさの

濃緑色の石が発見される。

この石は鳥取の若桜(わかさ)の千代川で採れる三倉石と分かる。

若桜という土地名も面白い。

被害者は埼玉県岩槻市にある人形メーカー「秀丸」の

専務・芦野鷹次郎と判明する。

もとは彫刻家だったが、人形メーカーに接近し、

王朝風な雰囲気を感じさせる、新しい人形をデザイン、

「秀丸」の人形は声価を得て、売り上げは急激に伸びる。

芦野は門跡尼寺で見た雛人形(御所人形)の顔を真似て

「秀丸人形」を作ったらしいのだが、

そのことを芦野はひどく気に病んでいたらしい。

芦野は家族と離縁して一人住まいだが、

娘の多伎恵はカーフを素材にした独自のデザインで

名を知られるようになった人形師。

父親の不慮の死に関心を持ち、光彦と共に鳥取へ向かう。

鳥取と言えば鳥取砂丘だが、

本作品では砂丘とは全く関係のない

鳥取市用瀬町や鳥取県八頭郡若桜町が主要舞台である。

用瀬には実際に「流しびなの館」があり、

人形好きの観光客が訪れているようだ。

雛送りの行事も行われている。

事件とは別に、雛流し、雛送りなどの神事、雛人形の種類

それに三倉石や佐治石の話など、初めて知り得て、

大変興味深い。






by toshi-watanabe | 2017-12-26 08:39 | 読書ノート | Comments(0)