内田 康夫著「黄泉から来た女」を読み終える

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再び「浅見光彦シリーズ」である。


内田康夫著「黄泉から来た女」を読み終える。

浅見光彦シリーズの第111作目である。

20106月から20114月まで、

「週刊新潮」に連載された。

このシリーズで連載というのは珍しい。

プロローグを加えるなど、加筆改訂されて

単行本として新潮社から出版されたのが20117月。

その後新潮文庫として出されている。

最近出たばかりの版の新潮文庫を手にする(¥750tax)。


最初に登場するのが、日本三景の一つ、天橋立。

京都府宮津市府中は天橋立の北側の付け根に位置し、

かって丹後の国国府が置かれていた土地だ。

そこに住むのが、主人公の神代静香で市役所に勤めて3年。

静香の父親一輝は観光船の船長をしている。

母親は静香を産んでほどなくして亡くなっている。

一輝の話によると、静子の母親徳子は地元の籠(この)神社

参詣した夜、太陽が口から飛び込む夢を見て身ごもったとか。

夢の話を籠神社の宮司にしたところ、天照大神の

ご利益があったのだと宮司は明言。

一輝は生まれてきた静香が天照大神の申し子だと信じている。

それで静香は「アマテラスの子」と呼ばれる。

徳子は山形県鶴岡市の出身だが、実家や親類縁者とは

縁を切っている。

面識のない女性が突然、市役所に静香を訪ねてくる。

込み入った内容の話の様子なので、昼休みか仕事の終わったころに、

もう一度来てほしいと伝えるものの、二度と姿を現さず。

その日の夕方、天橋立きっての名門旅館「文殊荘」の女社長の紹介で

静香を訪ねて来たのが、「旅と歴史」の取材で来ていた浅見光彦である。

ところが府中の東方、伊根の海岸で女性の遺体が発見される。

「舟屋」で有名な町である。

その遺体は静香を訪れていた女性と判明し、いよいよ事件が展開する。

光彦と静香は籠神社を訪れ、宮司の海部(あまべ)光彦と面会する。
海部氏八十二代當主、元伊勢籠神社宮司である。

同じ光彦同士、意気投合するのだが、この宮司は実在の人物で、

著者はこの作品を書くにあたり、

宮司から専門的な話を詳細に聞き取っている。

遺体となって発見された女性は、自殺や事故ではなく、

明らかに他殺で、殺人事件となる。

身元が判明し、静香の母親と同じ出身地、鶴岡市羽黒町から

静香を訪ねてきたものと分かるが、何の目的かは不明。

徳子の実家は羽黒山の神域ともいえる手向(とうげ)にある

宿坊「天照坊」、また殺害された畦田美重子の実家は

同じ手向の宿坊「大成坊」である。

静香は置手紙を残して、鶴岡へ向かう。

その置手紙を見て心配になった父親の一輝の依頼を受けて、

浅見光彦は鶴岡へソアラを駆って出かける。

場面は一気に鶴岡市羽黒町へ。

黄泉の国は死者の行くところ。

一説では出羽三山の月山がまさにそこで、手前にある

羽黒山がその入り口。

徳子の郷里、手向は羽黒山の出羽三山神社の門前町に当たる。

複雑な家庭事情が絡み、事件の解明を難しくしているが、

絡んだ糸が次第に解き放されて行く。

過去の行状から犯人と思しき人物が絞られる。

所が土壇場で、光彦は意外な人物を真犯人と、ほぼ割り出すのだが、

その人物は月山へ山菜取りに出かけて、そのまま行方知らずに。

籠神社や天照大神の話、出羽三山での修行に関わる話など、

非常に興味深いし、推理小説としても、もちろん面白い。






by toshi-watanabe | 2017-06-27 09:54 | 読書ノート | Comments(0)