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山本兼一著「利休にたずねよ」を読み終える

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山本兼一さんの著書「利休にたずねよ」を読了。
直木賞受賞作品で、昨年映画化されている。
天下一の宗匠と称された千利休の物語。
実に繊細で巧みな構成で書かれている。
自ら命を絶つ場面から始まり、時の流れを逆行して
利休の人生を浮き彫りにしている。
舞台の場面が変わるたびに時が逆流し、謎解きが続く。
利休ゆかりの人達が登場する。

「死を賜る」 利休
 天正19年(1591)2月28日朝 京 聚楽亭 利休屋敷 一畳半
秀吉は、美を思うがままにあやつり、美の頂点に君臨する利休が許せない。
床の間には軸も花もなく、白木の薄板に、緑釉の香合がある。
その前にすっと伸びた木槿の枝が一本。

「おごりをきわめ」 秀吉 利休切腹の前日 京 聚楽亭 摘星楼、
「知るも知らぬも」 細川忠興 利休切腹の十五日前
京 吉田 細川屋敷 長四畳、
「大徳寺破却」 古渓宗陳 利休切腹の十六日前、そして堺に追放の前日
 京 紫野 大徳寺 方丈
「ひょうげもの也」 古田織部 利休切腹の二十四日前 京 古田織部屋敷 燕庵

「木守」 徳川家康 利休切腹のひと月前 京 聚楽亭 利休屋敷 四畳半
お茶を頂いた家康は茶碗の銘を利休に尋ねると、
「木守(きまもり)」と答える。
秋に柿の実をとるとき、来年もまた豊かに実るよう、
ひとつだけ取り残す実を木守という。
なぜ「木守」との問いに、長次郎の焼いた茶碗をいくつか並べ、
弟子たちに好きなものを選ばせたところ、これひとつが
残りました、と答える。
家康はみょうに合点、利休こそ天下一の茶人と
称されている理由を納得する。

「狂言の袴」 石田三成 利休切腹のひと月と少し前、
「鳥籠の水入れ」 ヴァリニャーノ 利休切腹のひと月と二十日前、
「うたかた」 利休 利休切腹のふた月と少し前、
「ことしかぎりの」 宗恩 利休切腹の三月ほど前、
「こうらいの関白」 利休 利休切腹の前年 京 大徳寺門前利休屋敷 二畳半、
「野菊」 秀吉 利休切腹の前年 京 聚楽亭 四畳半、
「西ヲ東ト」 山上宗次 利休切腹の前年 箱根 湯本 早雲寺、
「三毒の焰」 古渓宗陳 利休切腹の二年前
「北野大茶会」 利休 利休切腹の四年前 京 北野天満宮社頭松原、
北野の大茶会で、なぜ人は茶に夢中になるのかと秀吉の問いに、
利休は茶が人を殺すからでございましょうと。
とは奇妙なことと、秀吉がさらに問うと、
茶の湯には、人を殺してもなお手にしたいほどの美しさ、麗しさがあります。
道具ばかりでなく、点前の所作にも、それほどな美しさを
見ることがありますと答える。
美しさは、けっして誤魔化しがききませぬ。
道具にせよ、点前にせよ、茶人は、つねに命がけで
絶妙の境地を求めておりますと。

「ふすべ茶の湯」 秀吉 利休切腹の四年前 筑前 箱崎松原、
このとき利休が大事に持っている、鮮やかな緑色の香合を
秀吉は目ざとく見つける。
秀吉が緑釉の香合に黄金一千枚を積んでも利休は手放そうとしない。

「黄金の茶室」 利休 利休切腹の五年前 京 内裏 小御所、
「白い手」 あめや長次郎 利休切腹の六年前 京 堀川一条、
「待つ」 千宗易 切腹の九年前 山崎 宝積寺城 待庵

さらに時代はさかのぼり、
「名物狩り」 織田信長 宗易四十九歳 泉州 堺 浜の寮
「もうひとりの女」 たえ 宗易三十四歳 泉州 堺 浜の納屋、
「紹鴎の招き」 武野紹鴎 与四郎(のちの宗易、利休)十九歳
泉州 堺 武野屋敷 四畳半、
与四郎(のちの利休)は紹鴎から茶の手ほどきを受ける。
「恋」 千与四郎 十九歳 泉州 堺の浜
ここまで逆戻りした利休の物語は幕となる。
緑釉の香合を手に入れた謎、そして決して手放さない謎が解ける。

最後は「夢のあとさき」 宗恩 利休切腹の日 京 聚楽亭 利休屋敷。
利休の妻、宗恩は緑釉の香合を庭の石灯篭に投げつけ
香合は粉々に砕けてしまう。

この小説の題名「利休にたずねよ」は謎である。
筆者は何をたずねよと意図しているのだろうか。
あとがき(解説)を書かれている宮部みゆきさんは、
「利休さん、あなたがもっとも深く愛した女性は、
やっぱり宗恩(そうおん)ですね」、
そうたずねたいと思います、と書かれている。
Commented by banban0501 at 2014-04-10 11:33
映画をみました
本と同じように映像がつくられていました

始めはとまどいながらも
だんだん 利休と秀吉の関係がわかってきて
権力の亡者となった秀吉と
あくまでも 美を追い求め続けた利休が
対照的に描かれて面白い映画だったこと
改めて思い出しました

利休にたずねたいこと 
私は 宮部さんのようには思いませんでした

美と命 同じ価値ありですか?かな?
Commented by toshi-watanabe at 2014-04-10 14:57
banbanさん、
早速のコメント有難うございます。
映画を観る前に原作を読もうと思っていました。 それで映画を見る機会が過ぎてしまいましたが、いつか映画も観たいと思います。
かなり原作に忠実に映画化されたようですね。 
「利休にたずねたいこと」、人により見方は様々でしょうね。
命を懸けても守り通したものは何だったのか、わたしはたずねてみたいです。

by toshi-watanabe | 2014-04-10 09:34 | 読書ノート | Comments(2)

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