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葉室麟著「山桜記」を読む

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葉室麟さんの最新刊「山桜記」を読み終える。
「オール読物」に掲載された
七つの短編をまとめたものである。

「汐の恋文」

肥前佐嘉の大名竜造寺政家の家臣、瀬川采女の
妻である菊子が、朝鮮半島の戦地にいる夫を気遣い、
采女宛てに書状を出す。
ところが悪天候のため船が難破する。
手紙を入れた。渋紙に包まれた
黒漆塗りの小箱は博多の津に打ち上げられる。
浜で拾った猟師は地元の役人に届け、
肥前の名護屋城に在陣していた秀吉のもとへ届けられる。

この書状が起因となって、瀬川采女が名護屋に
呼び戻され、あわや切腹かと。

「氷雨降る」

キリシタンで洗礼名ジュスタという
京の公家中山親綱の娘が、慶長4年9月、
島原半島に四万石を領する有馬晴信のもとに腰入れる。

関ケ原の合戦ののち領土問題に巻き込まれ、
有馬晴信は遺書を書き終え、
行水して身を清め、処刑の場に臨む。
ジェスタは二人の娘とともに実家の中山家に戻る。

「花の陰」

細川忠隆と妻の千世の物語。
忠孝の父は細川忠興、母はガラシャ(玉子)。
千世は加賀の大名前田利家の七女、母は芳春院(まつ)。
石田三成の命に背き、人質を拒んだガラシャは自害、
一緒にいた千世は前田家に逃れる。
このことが後々まで忠孝の胸のうちに残り、
二人の間のわだかまりに。

娘たちの将来を案じた千世は、
忠孝と話し合いの末離縁し、加賀へ帰る。

「ぎんぎんじょ」

慶長5年3月、肥前の大名鍋島直茂の継母、
慶誾尼(けいぎんに)が亡くなる。
93歳の大往生。
末期を看取ったのが、直茂の正室、彦鶴。
彦鶴が亡き姑の顔をしみじみと見入っていると、
侍女が草花の蒔絵を施した
黒漆塗りの文箱を捧げてくる。
文箱の蓋をとると、一通の書状。
書状を開いて目を通した彦鶴の顔に不審な色が浮かぶ。

誾誾如(ぎんぎんじょ)也
と書かれている。

「くのないように」

目が鋭く、長い髭を生やしていかつい顔をした
身の丈6尺3寸の大男、正妻を亡くしたのちに
若い妻を迎えた男は40歳になる。
打掛姿の若妻かなは20歳とまだうら若い。
男は加藤清正である。
この二人の間に女の子が誕生。
名前を八十(やそ)姫とつける。
八と十の間の九がないということで、
「苦のない生涯がおくれるように」という願いを込めている。

のちに八十姫は徳川家康の十男、頼宜のもとに嫁すことに。
嫁入りの折、父の清正愛用の片鎌槍を持たされる。
亡き清正の遺言によるもので嫁入り道具の一つ。

徳川頼宜と八十姫の間には子宝が恵まれかったが、
側室が生んだ光貞の継母として面倒を見、養育する。
光貞の4男がのちに八代将軍となる吉宗。

「牡丹咲くころ」

伊達政宗の孫娘、鍋姫が立花忠茂のところに嫁入りする。
当時、仙台藩62万国に対し、
立花家の柳川藩は11万石と、身代の釣り合わない婚儀だった。

そして伊達騒動が起こる。

二人は隠居して浅草下屋敷で暮らす。
忠茂と貞照(鍋姫)の子で、柳川藩主となっている
立花鑑虎(あきとら)は毎年、
上屋敷の紅白牡丹が咲くと、母貞照に切り花を贈る。
その礼状が父忠茂から届く。
礼状には、「今年の牡丹はとりわけ見事だ」と褒めたうえ、
上屋敷の牡丹を下屋敷に移し替えて欲しい」と書かれている。
さらに
「--花の根の土落ち申さざる、牡丹の存ぜず候様に」と。

「天草の賦」

寛永14年冬、肥前島原と肥後天草の農民
およそ2万8千人が蜂起する。
いわゆる島原の乱である。

黒田藩主忠之は在勤中の江戸から
夜半を厭わず騎馬で急行、小倉に向かう。
黒田忠之の祖父は黒田如水(官兵衛)である。、
黒田家の重臣である黒田美作の父は
荒木村重の家臣であったが、如水を助けたことがあり、
如水は恩義を感じ、美作を養子にする。

天草四郎の命を救おうと、
万という若い女性が登場する。


短編集であるが、
それぞれの作品は読み手に感動を与える物語で、
珠玉の作品集である。
Commented by banban0501 at 2014-03-03 09:41
歴史好きの方にはたまらないですね

作者の取材力と想像力の賜物ですね

女性の力も感じられそうな
作者紹介ありがとうございました
Commented by toshi-watanabe at 2014-03-03 15:48
banbanさん、

最近は葉室麟さんの著作にはまっています。 現代にも通じる、人間の情愛がひしひしと身近に感じられる、素晴らしい作品を書かれています。 これまでに読んだ「さわらびの譜」、「蜩の記」、いずれも素晴らしい感動の著書です。
by toshi-watanabe | 2014-03-03 09:31 | 読書ノート | Comments(2)

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