折々の記

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青山文平さんの最新書き下ろし作品「鬼はもとより」を読み終える。
私にとってなじみのない作家である。
著者紹介によれば、青山さんは1948年神奈川県生まれ。
早稲田大学政治経済学部卒業、経済関係の出版社勤務を経て、
フリーライターとなる。
2011年、「白樫の樹の下で」で第18回松本清張賞を受賞、
作家デビューされたとある。

さて「鬼はもとより」だが、読み始めてみるものの、
淡々とした語り口で、どうものめり込めない。
ところがしばらく読み進めるにつれて、急に面白くなり、
すっかり物語にのめり込んでしまう。

江戸の中期、寛延3年(1750)、地方の小藩の武家で
御馬廻りをしていた梶原抄一郎が、藩札掛を命じられる。
藩札とは、その藩内のみで通用する貨幣の代用品で、
当時幕府から藩札の発行が認められていた。
藩の厳しい台所事情を立て直すために、
勘定方に設けられた藩札掛だが、頭の老年の佐島兵右衛門のもと、
抄一郎を含む5人の若者たちは、真剣に藩札の仕組みを学びながら、
藩財政の立て直しに向かう。
数年後見事に立て直したものの、ある年、春から気候が不順、
冷夏となり、厳しい飢饉に遭遇する。
兵右衛門は亡くなり、抄一郎が掛の頭となっていたが、
藩の家老より、実体金に合わない多額の藩札を刷り増しするよう命じられる。
これを拒否して、抄一郎は藩札の版木を抱えて脱藩、江戸へ向かう。
この小藩は結局改易となる憂き目に。

江戸は聖天様に近い浅草山川町の裏店で、
表向きは万年青(おもと)売りの浪人生活を送る抄一郎。
実はフリーの藩札コンサルタント。
家禄三百石の旗本だが無役の小普請、深井藤兵衛と縁がつながり、
藤兵衛は仲介役を果たしてくれ、何かと抄一郎の面倒を見てくれる。
かって小藩で実績を上げた抄一郎の手腕が世間に知れ渡り、
藩札に関する知恵袋と呼ばれるようになる。

北の海に面した島村藩(1万7千石の小藩)が藩札を導入したいと、
抄一郎に相談を持ち掛ける。
宝暦9年(1759)の事である。
改易寸前にまで落ち込んだ島村藩。
自分は鬼になっても島村藩を立ち直らせたいと
立ち上がったのが梶原清明で、元の家老の嫡男。
これからがこの物語の本番である。
結末は読んでのお楽しみ。

読み終えてみると、江戸時代の小藩での物語だが、
現代社会に通じるテーマとも取れる。
国の財政の立て直し、紙幣の発行と流通のコントロール、
産業や流通の育成、国(国民)を豊かにすること、
責任所在の明確化などなど、アベノミクスの事を
ふと思ったりしている。
by toshi-watanabe | 2014-10-30 13:16 | 読書ノート | Comments(0)
さていよいよ最終日の三日目。
出発前、宿のロビーで見られる佞武多、
ホタテ絵馬、リンゴのオブジェ(?)。

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宿には広い庭園があり、バスに乗る前に散策する。
昨夜来降り始めた雨も小やみになり、
傘なしでもなんとか歩ける。
黄色い花はデージーの一種だろうか。

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宿を発ちバスは日本海側の千畳敷海岸へ。

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千畳敷駅から五能線に乗車。
無人駅である。

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あいにくの雨模様で、車窓からの眺めもいまいち。
このあたりから眺める夕日は最高とか。

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深浦駅で下車。
ここからバスで白神山地・十二湖へ向かう。
今回の旅で一番訪れたかったスポットである。
雨もいくらか小やみになり、傘なしで散策する。
朱い実はツルリンドウ。

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青池は小さな池である。
不思議な青い色をしている。

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ブナの自然林が続く。
上り下りも結構あるが、森林浴を楽しむ。

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平成名水百選に選ばれている「沸壺地の清水」。

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バスの車窓から「日本キャニオン」を眺めた後、
遠路北上駅へ向かう長距離長時間の移動となる。
東京駅着は午後10時、2泊3日の旅を終える。

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余談だが、この日、携帯電話が鳴り、従弟の訃報を知る。
翌日葬儀に参列のため沼津の原まで出かけることに。
by toshi-watanabe | 2014-10-27 10:14 | 旅行 | Comments(2)
二日目、宿を出発して青森港へ。
波止場には、かっての青函連絡船「八甲田丸」も見られる。
今はメモリアルシップとして、博物館になっている。

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青森ではナナカマドが街路樹として植えられている。
大変燃えにくく、7度竃(かまど)に入れても燃えない
ところから名付けられたと言われることも。
今ちょうど赤い実をつけている。

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小型の観光客船「ポーラスター」に乗船。
波が荒いときには船が出ないときもあるようだ。
海上からの眺め。

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途中仏ヶ浦近辺に立ち寄る予定だったが、
波が荒く近寄れず、沖合を通過する。
折角の奇岩があまりよく見えないのは残念。

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下北半島の佐井港に到着後、再びバスに乗車し、
下北半島最北端の大間崎へ向かう。
ここは本州の最北端でもあり、大間の高級マグロで名高い。

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土産物店の店先に色々な貝殻が並んでいる。

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大間崎の次の目的地は恐山。
一度訪れてみたかった恐山である。
以前は山の下から歩いたのだろうが、
今では三途の川もバスで渡り、
恐山菩提寺の山門前の駐車場で下車する。
左手には六地蔵。

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仁王像

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本坊は曹洞宗円通寺である。
あたりの雰囲気と対照的に周りの紅葉が今盛り。

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二日目の宿は古牧温泉。
夜は津軽三味線と民謡ショーが楽しめる。
スコップ三味線の演奏というのも面白い。

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by toshi-watanabe | 2014-10-27 10:01 | 旅行 | Comments(0)

青森方面へ二泊三日の旅

10月19日、青森を巡る旅に出かける。
ツァーに参加、早朝東京駅構内で集合、
添乗員さんに聞くと、参加者42名とのこと。
最高時速320キロを出す東北新幹線、
E5系「はやぶさ5号」は8時20分に発車する。
さすがに高速で、しかも揺れが少なく乗り心地は抜群。
東京を発った後、大宮、仙台、盛岡の3駅だけ停車し、
3時間で終着駅、新青森駅に到着する。

休む暇もなく観光バスに乗車。
一気に津軽半島の最北端、竜飛崎へ向かう。
通常は冷たい風が吹き荒れる岬のようだが、
運よく好天にも恵まれ穏やか、風もさほどではない。

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灯台。

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「津軽海峡冬景色」碑の前に立つと、
石川さゆりのメロディーが流れる。

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野生のチコリーがブルーの花を咲かせている。

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すぐ近くに階段国道339号があり、下まで降りてみる。
階段の両側には、咲き終わったばかりのような紫陽花。

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観光客によく知られた名物おばさん。
つぶ貝を試食させてもらう。

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ローカル線のバスが停車している。

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竜飛崎を後に、金木へ向かう。
かっては津村家の屋敷だったところが
太宰治記念館「斜陽館」となり、観光客が訪れる。
太宰治の父で、大地主、津島源右衛門が明治40年に
建築した入母屋造りの建物で、青森名産のヒバを使っている。
階下11室278坪、2階8室116坪、
庭園を含めて宅地680坪を有す豪邸、
国指定重要文化財である。

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初日の宿は大鰐温泉。
途中の車窓から津軽富士と言われる岩木山が見られる。

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by toshi-watanabe | 2014-10-27 09:38 | 旅行 | Comments(0)
11月14日、すでに大型台風も通り過ぎ、
朝から青空が広がり、澄み切った秋晴れとなる。
上野公園の上野の森美術館にて開催中の
「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」の
招待券を偶々頂いていたので、
朝から上野へ向かう。

上野公園を歩くと、「蜂に刺されないように」との
立て看板があちらこちら、目につく。
それでも大勢の人たちがあまり気にすることもなく歩いている。

上野の森美術館、既に入場者が列をなしている。
後で新聞で知ったのだが、この日入場者が10万人を突破、
10万人目の入場者には記念品贈呈。
結局30分近く待たされ、やっと館内に。
無論館内も見学者が多く、ゆっくりと見学できるものではない。

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膨大な数の浮世絵を所蔵している米国ボストン美術館の
浮世絵コレクションの中から、約140点に及ぶ、
多彩な北斎の作品が里帰り。
実はこの北斎展、昨年暮れから今年にかけて、
名古屋ボストン美術館、神戸市立博物館、
そして北九州市立美術館分館にて巡回展示され、
この東京上野が最後である。

文化中期の団扇絵 「菖蒲に鯉」。

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天保時代の富嶽三十六景から
「神奈川沖浪裏」。

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「凱風快晴」(赤富士)。

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「本所立川」。

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北斎の娘、葛飾応為が描いた肉筆画も出展されている。
「三曲合奏図」。

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この展示会は11月9日まで開催されている。
北斎展を見学し終えると、ちょうど昼時。
東京国立博物館に入り、本館横にあるレストラン
「ゆりの木」で昼食をとる。
ここはホテルオークラ系列で、美味しい食事がいただける。

さて腹ごしらえした後は、
前日始まったばかりの「日本国宝展」を見学する。

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東京国立博物館にて開催される国宝展は今回が4度目、
「祈り、信じる力」をテーマにしている。
仏や神と人の心をつなぐ役割を担ってきた
絵画、彫刻、工芸、典籍などが出品されている。
平成26年9月1日現在、「保護法」によって指定された
重要文化財は、美術工芸品が10,624件、
うち872件が国宝である。
又建造物は2,419件が重要文化財、うち220件が国宝。
建造物と美術工芸品を合わせた有形文化財の
国宝は1,092件となる。
今回展示されるのは約1割に当たる119件である。

入場制限もなく、館内もそれほどの混み具合でなく、
比較的ゆっくりと見学できる。
会場に入って最初に目にするのは
奈良薬師寺の仏足石。
薬師寺で何度か見学している。

和歌山金剛峯寺の「仏涅槃図」(平安時代)。

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京都宇治平等院の「雲中供養菩薩像」(平安時代)が二体。
「南14号」と「北13号」。

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土偶。
「縄文のビーナス」を呼ばれる。

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京都聚光院の「花鳥図」(室町時代、狩野永徳筆)。

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京都智積院の「松に秋草図」(安土桃山時代、長谷川等伯筆)。
今回一番見たかった作品である。

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京都狐篷庵の「大井戸茶碗 銘喜左衛門」(16世紀 朝鮮)。

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三井記念美術館で見たことのある
「志野茶碗 銘卯花墻」(16~17世紀 安土桃山時代 美濃)

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奈良興福寺の「多聞天立像」(平安時代)。

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「薬師如来坐像」(平安時代、奈良国立博物館)。

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「普賢菩薩騎象像」(平安時代、大倉文化財団)。

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阿弥陀如来の両脇侍、「観音菩薩坐像」と「勢至菩薩坐像」
(平安時代、 京都三千院)。
三千院にて、何度か拝観している。

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京都浄瑠璃寺の広目天立像(平安時代)。

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奈良安倍文殊院の「善財童子立像」(鎌倉時代、快慶作)。

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これも最も関心があり観たかったひとつ、
奈良元興寺、極楽坊の「五重小塔」(奈良時代)。
日本にある国宝の五重塔で最も小さく、
唯一屋内にある五重塔である。

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出展作品の一部を紹介。
写真は主として目録からコピーさせていただいた。
貴重な日本の宝物をまじかに見られる絶好の機会である。
by toshi-watanabe | 2014-10-18 15:29 | 一般 | Comments(0)
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昨年から今年にかけて雑誌に掲載され、
つい最近単行本として出版されたばかりの
葉室麟さんの新作「風花帖(かざはなじょう)」を読み終えたところ。

九州豊前小倉藩(小笠原藩)では、安永6年(1777年)
犬甘(いぬかい)知寛が家老に就任し藩財政改革を行った。
犬甘の努力により寛政10年(1798年)頃には財政も好転し
銀8千貫の貯蓄が出来るまでに至った。
しかし、反対派の陰謀により享和3年(1803年)失脚し無実の罪により入牢。
非業の死を遂げた。
その後、藩内では重臣間の派閥争いが続くこととなった。
犬甘兵庫派と小笠原出雲派である。
世に「白黒騒動」と言われる。
因みに「白」は小倉城にとどまった城組。
「黒」は小倉城を追われ黒崎城にこもった一派のこと。

こんな藩内の派閥抗争の中、運命のほころびに
翻弄される男女の哀切が描かれたのが、この作品である。
主人公は勘定方、印南(いんなみ)新六、
子供の頃から親戚筋の杉坂監物の屋敷で育てられる。
杉坂家には吉乃(きちの)という娘がいる。
吉乃は女中をお供に新年の挨拶で親戚を訪れた帰り、
神社に立ち寄り、神楽踊りを見物する。
火照った顔を冷やすように木立に一人で入ったところ、
酒に酔った六尺豊かな長身、屈強な若者につかまり、
あわやという場面に、新六が現れて吉乃を救う。
ところが若者はご重役、伊勢平右衛門の嫡男、勘十郎。
御前試合で決着をつけることとなる。

実は普段無口で付き合いのあまりない新六は夢想願流の使い手。
六人の相手を破った後、新六は勘十郎と対決。
段違いの腕前で、新六は勘十郎の木刀を撥ね飛ばし、
尻餅をついた勘十郎の肩を打ち砕いてしまう。
このため新六は江戸詰となり、杉坂屋敷を去る。

三年後新六が江戸から戻る頃に合わせたように、
杉坂吉乃は書院番頭、菅(すが)源太郎と祝言を上げる。

次々と起こる騒動に色々と巻き込まれるが、
吉乃の危機の場にいつも現れ救ってくれるのが新六。
新六には杉坂家から吉乃との夫婦縁組の話が
あったのだが、江戸詰となったため話は取りやめに。
その話を吉乃は知らされていなかった。

物語の終盤、
自ら命を絶ち、事切れながら吉乃の前に現れた新六の
姿を目にして、吉乃はひとり呟くように言う。

「わたくしは今生ではあなたと添えませんでしたが、
 来生では必ずあなたのもとへ参ります」。

その時、澄み切った青空を白雪が舞っていた。
風花という。
雪が積もった山頂から風に乗って雪が平地まで下りてくる。
by toshi-watanabe | 2014-10-15 09:31 | 読書ノート | Comments(0)

映画「蜩ノ記」を観る

二日前、久しぶりに劇場での映画鑑賞。
葉室麟さんの原作が映画化された「蜩(ひぐらし)の記」である。

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直木賞受賞の原作は2年前に読んでおり、
このブログでも取り上げているように記憶している。
今回、映画化が発表されたときから是非とも見たいと思っていた。
この原作を読んだのが、葉室ファンになった切掛けでもある。

脚本、監督は小泉堯史さん。
原作通りの筋で映画化されており、
原作者の書きたかった真意が忠実に表現されているように感じた。
ある事件により10年後の切腹を命じられ、寒村で蟄居しながら、
ひたすら藩主三浦家の家譜編纂にあたり、残り3年となる
元郡奉行戸田秋谷(しゅうこく)を演じる役所広司の演技は見事である。
城内で些細な事から刃傷沙汰を起こし、
秋谷の監視役を命じられるものの、
次第に秋谷とその家族への情愛に魅かれて行く檀野庄三郎を演じる
岡田准一も役所広司との呼吸がぴったり。
秋谷が日々の事を書き留めているのが、「蜩の記」である。

戸田秋谷を演じる役所広司

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檀野庄三郎を演じる岡田准一

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秋谷の妻、織江を演じる原田美枝子

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秋谷の娘、薫を演じる堀北真希

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愈々秋谷切腹の朝を迎え、
長久寺の境内へ向かう、最後の場面は
悲しくもあり、清々しくもあり、素晴らしい情景である。

この映画化に当たり、原作者の葉室麟さんは、
次のようなメッセージを書かれている。

「蜩ノ記」という小説は本来、わかり難い作品だと思います。
秋谷がなぜ、死へ向かって淡々と生きるのか。
自分自身に引き比べて、納得できるひとが少なくても
不思議ではありません。
ただ、書き手であるわたしは60を過ぎて生きている日々に
秋谷が見た風景が重なり合っていくような気がしています。
私は50歳を過ぎて、歴史時代小説を書き始め、
60歳で直木賞をいただきました。

そのおり、心に浮かんだのは、ある作品の中で使った諺の
「柚子は九年で花が咲く」でした。
「桃栗三年柿八年」と言いますが、すべて実がなるという諺です。
なぜか、柚子だけが「花を咲かせる」となっています。
人生の後半で何事をなしとげたいと思った人間にとっては、
「花」という言葉が若いときよりも心に染みます。
「蜩ノ記」は人生の残り時間を限られた人間の物語です。
作者自身、人生の時間を砂時計の砂が落ちるように見つめています。
その「蜩ノ記」で直木賞という花を咲かせることができたと思ったら、
まだ、花はありました。

小泉監督始めスタッフは黒澤組の伝統を引き継ぎ、
いわば日本映画のスピリッツを伝える精鋭の方々だと思います。
大学生のころ、映画研究部だったわたしにとって、黒澤組の手により、
自分の作品が映画になるのは、夢のような体験でした。
大袈裟ではなく、「生きていてよかった」と思いました。
遠野のロケ地を訪れ、主演の役所広司さん、岡田准一さん、
堀北真希さん、原田美枝子さんら輝くような俳優がそろっての
撮影風景を見学したときは、自分がこの場にいるということが
信じられない思いでした。

映画の中で戸田秋谷の家の庭に柚子が植えられています。
「蜩ノ記」には柚子のことは書いていません。
わたしがエッセイなどで書いた人生への感慨を
小泉監督が汲み取ってくださったのでしょう。
試写を見て、そのことを知ったとき、目が涙でかすんだように思います。
わたしにとって映画「蜩ノ記」は最高の贈り物でした。
多くの観客の方にこの映画の感動を味わっていただきたい。
そして、なにより、この映画はわたしが九年待った柚子の花であること
をお伝えしたいと思います。
どうやら、「人生の花」はゆっくりと開くようです。


(追記)

撮影現場で使われた藩主三浦家の家譜、本稿16巻に
清書18巻は、どのページもきちんと文字がしたためられた。
「新訂黒田家譜」などの家譜資料を参考に文章を作り、
書家が実際に書いたものである。
秋谷役の役所広司と庄三郎役の岡田准一には書道の練習が課せられた。
また岡田准一は居合を習うため、撮影開始の半年前から、
天真正伝香取神道流の道場に通った。
役所広司と娘役の堀北真希は所作を学ぶため小笠原流の稽古に励んだ。
by toshi-watanabe | 2014-10-10 14:02 | 一般 | Comments(4)
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山本兼一さんの「とびきり屋見立て帖」シリーズの第2弾の単行本、
「ええもんひとつ」を読み終える。
つい先日、読後感を書きこんだばかりの「千両花嫁」の続きで、
6点の作品から成っている。
「夜市の女」、「ええもんひとつ」、「さきのお礼」、「お金のにおい」。
「花結び」、そして「鶴と亀のゆくえ」の6編である。
但し、最後の「鶴と亀のゆくえ」(とびきり屋なれそめ噺(ばなし))は、
真之介が独立する前、からふね屋で二番番頭をしていた時代の話で、
物語が逆戻りしている。

「夜市の女」
真之介が独立する際、大変お世話になった桝屋喜右衛門からの依頼で、
真之介とゆずは黒楽茶碗と扇子を預かり、泥棒市とも呼ばれる夜市に出かける。
盗品を扱う市ではなく、贋物、筋のわるい品物などが出され、
昼間開かれる市である。 老舗の道具屋は足を踏み入れない。
楽茶碗も扇子も決して値打ちものではない。
ところがオークションにかかると、値段がどんどんつり上がり、
ゆずと同年配の若いが粋筋の女が百五十両で買い取る。
粋筋の女は、桂小五郎の身の回りを世話する、吉田屋の女将、幾松。

「ええもんひとつ」
坂本龍馬が京に舞い戻り、とびきり屋にやってくる。
龍馬から「道具を買う時の極意は?」と聞かれて、真之介は答える。
「道具を選ぶ極意は一番ええもんひとつだけ買うことです。
 安物は値崩れしますけど、とびきりええものは、けっして値崩れしません。」

香道家元で名門の公家である浮橋家で番頭を務め、青侍と呼ばれる
藤原老人の所に、色絵雉の香炉がある。
野々村仁清作の京焼、この香炉が欲しくて真之介が何度も通うが、
うまく行かず、ゆずの登場で、見事色絵雉の香炉を手に入れる。

「さきのお礼」
命を狙われている桂小五郎のために、とびきり屋の二階で、
いつでも着替えができる様に用意し、着替えの着物は吉田屋の幾松が届ける。

真之介とゆずは手代を連れて、清水への五条坂へ出かけた帰り、
三年坂下にある安井の金毘羅様にお参り、偶然、幾松と出会う。
ゆずはお願いする時はいつも先にお礼を言うことにしている。

「お金のにおい」
壬生村の郷士、秦野清左衛門の屋敷を新之助は訪れる。
朝鮮の焼物、3両の値打ちしかない十三個の壺を30両で買い求める。
ところがひとつの大きな壺は李朝官窯のものと、ゆずは目利きする。
描かれた竜の爪が5本あることから判断。
対馬屋敷に持ち込むと、200両で売れる。

手代の牛若が目利きのことを訪ねると、
ゆずは答える「一朝一夕に目利きになると言われても難しいが、
ひとつ覚えといたら、ええことがあるえ。
ほんまに、ええ道具というのんはなあ、お金のにおいがするええ」。

「鶴と亀のゆくえ」
茶の湯の東の家元の手元にあった双幅の「伝狩野永徳 鶴亀図」
見事な水墨画の掛け軸のうち、亀の図の掛け軸を、馬鹿な若宗匠が
芸妓との遊びに必要な金のため売りさばいてしまうのが発端。
かりがね屋の善右衛門に話があり、二番番頭の真之介が買い戻しに駆け回る。
掛け軸は西の家元のところにあり、新之助が苦労算段し、
無事亀の図を買い戻し、双幅がそろう。

恋仲のゆずを嫁にしたいと、新之助は
善右衛門に話を切り出すものの、怒りを買ってしまう。
やっとのことで、千両箱を結納金として持参したらとの話になるところで
物語は終わっている。
by toshi-watanabe | 2014-10-08 09:53 | 読書ノート | Comments(2)

「水墨画展」終了

月に2度、水墨画教室に参加している。
教室の行われているのが、「横浜市社会福祉協議会」の
横浜市青葉区内にある「横浜市ユートピア青葉」、
わが家から歩いて8分ほどのところにある。

9月から10月にかけて4週間、教室仲間の作品
20数点を会場通路の壁やロビーを利用して展示していたが、
10月4日に無事終了。

つたない作品で恥ずかしい限りですが、
私の作品2点を紹介させていただきます。

「菩薩」(8号)

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「山湖」(6号)

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by toshi-watanabe | 2014-10-07 11:21 | 一般 | Comments(2)
9月末から10月初めにかけて、
お彼岸の墓参りをし、群馬倉渕へ出かける。
首都高から京葉道路を経て八柱霊園に。
千葉県松戸市にあるが、都営の霊園で広大である。
彼岸の中日はすでに過ぎており、
霊園内は比較的閑散としている。

墓前には供えたばかりらしい生花が見られる。
妹たちが来たのだろう。
柘植の木の枝を刈りこんだり、周りを清掃する。
新しい生花を供え、線香に火を点け故人を偲びお参りする。

墓参後は高速道路の外環道に入り、関越道を通って群馬へ向かう。
ほとんど渋滞もなく、順調に高崎市内へ。
倉渕に入ると、道の両側にはコスモスが満開。
稲刈りが終わり天日干しになっているのも見える。
彼岸花はすでに花の盛りを終わり、
情けない姿をさらしている。

草花や木の実などの写真をアップします。

人の背丈よりも高く伸びているコスモス。

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コスモスも色とりどり。

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早く咲き始めた黄花コスモスがまだ咲いている。

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ハナトラノオ(カクトラノオ)もまだ咲いている。

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ムラサキシキブの実も色鮮やかに。

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かろうじて咲き残ったヒガンバナ(マンジュシャゲ)。

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タカサゴユリも1輪だけ残っている。

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ワレモコウ。

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シュウメイギク。

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スイフヨウの花。

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ホウセンカ。

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シュウカイドウ。

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ローズリーフセージ。

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遠くまで香りの届くキンモクセイの花。

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ヤマハギの花。

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ネジリバナ(ネジバナ)が1本だけ残っている。

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ダンギク。

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ゲンノショウコ。

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アオバナフジバカマ。

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ナンバンギセル。
今年は花の数が少なく、色もすっきりしない。

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ツリガネニンジン。

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ツリフネソウ。

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ホトトギス。

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ツリバナの実。

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マユミの実。

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アケビの実。

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2日間は秋晴れに恵まれ、
快適な山里の生活が過ごせる。
直射日光は強いものの、木陰に入ると、
さわやかな空気で実に心地よい。

最近は開通したばかりの圏央道を利用していたが、
今回は久しぶりに関越道をそのまま練馬まで行き、
都内の環八道路を通る。
幸い渋滞にも巻き込まれず、予想外に早く帰宅できる。
by toshi-watanabe | 2014-10-05 09:05 | 草花 | Comments(0)