折々の記

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2017年 06月 13日 ( 1 )

引き続き、内田康夫さんの作品です。

改版が出たばかりの「熊野古道殺人事件」(中公文庫 ¥600+税)。

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読書ノートを書いたばかりの最新作の「孤道」でも

熊野古道が主要場面になっていたが、

その熊野古道の場面を思い出しながら、この著書を読んだ。

実はこの著書の元になったのは、

「別冊婦人公論」に「南紀ミステリー紀行」と銘打って

掲載された三つの連作短編小説である。

 「帰らざる棺」(1990年 春号)

 「鯨の哭く海」(1990年 秋号)

 「龍神の女」 (1991年 春号)

この三作を合併させて書き直した作品を、

「熊野古道殺人事件」としてノベルス版で

199111月に刊行されたのが始まりで、

その後文庫本として、中公文庫で199510月、

光文社文庫で199910月、角川文庫で20104月、

それぞれ発行されてきた。

さらに改版が本年5月に中公文庫として出された。

著者はその都度、手を加えているようだ。

この作品の面白い所は、作者の内田康夫自身が登場するという設定。

軽井沢在住の内田康夫の依頼により、

ご存知名探偵、浅見光彦は愛車ソアラで熊野へ向かうのだが、

内田本人もこの車に同乗し、行動を共にする。

内田の高校大学を通じての友人であるT大研究室の

松岡正史教授から熊野行きを誘われた内田は浅見を連れて行く。

この物語のクライマックスは「補陀落渡海(ふだらくとかい)」。

南紀熊野那智で古くから行われていた風習だが、

現在では行われていない。

松岡研究室で助手をしている岳野晴信を中心に学生たちが協力し、

この「補陀落渡海」を再現させようというのが今回のイベント。

その見学を主目的に、松岡、内田そして浅見光彦が南紀へ。

岳野自身が渡海上人として渡海船に唯一人乗り込み、

船内の柩の中に入る。

極楽浄土での往生を願い、伴船を従えて沖に向かうが、

突然、岳野晴信が意識を失う。

浜辺に連れ戻すものの、すでに息絶えている。

人々は祟りではないかと恐れるが、毒殺と判明する。

他にも関連した事件が起こるのだが、

熊野古道を巡る旅は、大いに興味を魅かれる。

内田康夫さんは、この著書を書くにあたり

三度南紀を訪れている。

加太の淡島神社や龍神温泉など一度訪れてみたい場所だ。

物語の終わりに近く、緊急事態に直面した内田は断りもなく

浅見のソアラに乗り込み、松岡を助手席に乗せて、

南紀の山道を走る。

ところが前方からの車をよけそこなって崖から落ち、

二人とも大けがをする。

ソアラは無残にも大破。

東京に戻って1か月ばかり後、浅見光彦のところに

ニュー・ソアラが届けられる。

勿論内田康夫の手配したもの。

追記:
井上靖の著書に、「補陀落渡海記」がある。




by toshi-watanabe | 2017-06-13 14:46 | 読書ノート | Comments(0)