2017年 06月 06日 ( 1 )

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葉室麟さんの新著「潮騒はるか」を読む。

この作品は、「ポンツーン」の平成281月号~

平成2812月号に連載されたものに、

加筆・修正し、今回単行本として幻冬舎より出版された。

「ポンツーン」は幻冬舎が出している月刊PR誌である。


本の帯カバーには、「女に残されたのはかなわぬ想いと
生き抜く覚悟」そして『風かおる』の感動再び!とある。
『風かおる』は2015年9月に出版されている。



時代は幕末、長崎が舞台となっている。

筑前博多で鍼灸医をしていた菜摘(なつみ)が

弟の渡辺誠之助、博多の眼科医稲葉照庵の娘、千沙を伴い、

長崎で蘭学を学んでいる夫の佐久良亮のもとにやって来る。

腕を見込まれ、菜摘は長崎で鍼灸医として仕事を始める。

長崎奉行所を預かる岡部駿河守長常の妻香乃は病い勝ちで、

長常から依頼があり、菜摘は香乃の手当てを引き受ける。

奉行所の牢には女牢がおり、病人が出たときには、

男の医者では何かと不都合と菜摘が女牢の病人も

診るようになる。

菜摘の鍼医療に興味を抱いた、シーボルトの娘いねが登場する。

千沙には佐奈という姉がいるのだが、

夫が毒物による不審死の後、佐奈は行方をくらましている。

その佐奈らしき女人に奉行所の牢で、菜摘は巡り合う。

女医のいねに頼んで、此の女牢の病状を診察してもらう。

佐奈であることは間違いないとわかるものの、

妊娠しており、長崎に来るまでの疲労が重なり、

このままでは、命が危ない、何とか牢から出す方法は

ないものかと、関係者で思案する。

色々手立てを考え、奉行の了解を得て、

佐奈を牢から出す事が出来る。

佐奈の夫の死、そして佐奈が家を出奔した理由などが、

次第に明らかになっていく。

物語の途中では、勝海舟も登場する。

やがて佐奈は女の子を産み、ゆめと名付ける。

佐奈は国(くに)と名をあらためて、

いねのもとで医者の修行をし、産科医となる。

菜摘はその後も長崎で鍼灸医として働き続ける。

長崎奉行の岡部長常からの話もあり、「時雨堂」という看板を掲げる。

物語の最後の部分の文章をそのまま引用したい。

人は苦難の中にあっても、負けずに進み続づけるならば、

やがて天から慈雨が降り注ぐのだ、と菜摘は思った。

よく晴れた日だった。 菜摘は青空を見上げた。

風に乗って潮鳴りが聞こえてくる。


追記:

ポンツーンとはPontoon、船橋、浮橋、ポントン橋のことである。
小舟を横に並べて、その上に板を渡して橋として使うのだが、
もともとは軍隊で用いられたもののようだ。
以前プエルトリコにいた折に、カリブ海のキュラソーへ、
遊びに行ったことがある。
そのキュラソーにポントン橋があった。
寄港する観光客船などが通るたびに、
船橋は陸地に移動(エンジン起動)する。
船が通り過ぎるまでの間、人も車も橋の袂で待たされる。
ビールを飲んだり、人とおしゃべりしたり、
現地の人たちは、のんびりと橋が通れるようになるまで待っている。

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by toshi-watanabe | 2017-06-06 10:00 | 読書ノート | Comments(0)