葉室 麟著「草笛物語」を読み終える

d0037233_08243690.jpg

葉室麟さんの最新作「草笛物語」を読み終える。

「羽根藩シリーズ」の第5弾である。

このシリーズの第1弾は、直木賞受賞の「蜩の記」で、

映画化もされ、大好評を得た。

映画の最後の場面は感動的で、今も記憶に新しい。

九州豊後の羽根藩のお家騒動がテーマとなっているが、

「蜩の記」ゆかりの人たちが登場する。

「蜩の記」の主人公は、戸田秋谷、羽根藩の要職にあったのだが、

ある事件により蟄居の身となり、村の一軒家で家族とともに過ごし、

専ら藩主三浦家の家譜編纂を日常業務としていた。

10年後、あらかじめ決められていた通り切腹して果てた。

藩から若い藩士が見張り役として戸田家に派遣されたのが、

檀野庄三郎、秋谷の仕事を手伝いながら次第に秋谷を師と仰ぐように。

やがて秋谷の娘、薫と夫婦となる。

2人の幸せな姿を目にして、秋谷は最期のときを迎えた。

さて「草笛物語」には、上記の檀野庄三郎・薫夫妻が出てくる。

2人には、桃という娘も。

また秋谷の息子、郁太郎、成人後名前を改め戸田順右衛門と

娘の美雪も登場する。

庄三郎はあることがきっかけで、藩の要職を離れ、

相原村にある薬草園の番人をしている。

順右衛門は中老に就き、藩の重要な要職に、
そして鵙殿(もずどの)と呼ばれる存在。

藩主吉房は病弱で若くして亡くなる。

江戸屋敷にいる世子の鍋千代が未成年のまま、藩主を継ぐことになり、

吉通と名をあらため、九州豊後へお国入り。

小姓役の赤座颯太(そうた)も豊後羽根藩へ向かう。

颯太は鍋千代と同い年、両親はともに亡くなり、

豊後には実家もなく、伯父の水上岳堂宅に世話になる。

岳堂は藩校、有備館で教授をしている。

颯太が騒動に巻き込まれるのを案じた岳堂は颯太を庄三郎に預ける。

この颯太を中心に物語は展開する。

戸田秋谷が切腹して10数年のときが経つのだが、

秋谷の生きざまは藩内で語り草となっており、

秋谷に尊敬の念を抱く藩士も多くいる。

秋谷が書き残した「蜩の記」に関心を抱く吉通は、

その手記を保管している庄三郎の元を訪れる。

同時に庄三郎から藩内の状況をいろいろと聞き取る。

藩主の一門である、三浦左近がまだ若い藩主の後見役となるのを目論み、

幕府からお墨付きを得るべく江戸へ向かう。

月の輪様とも呼ばれ、いずれは羽根藩を牛耳ろうという野心を抱いている。

これを察知した藩主の吉通に、颯太を含む小姓たち、

そして庄三郎や順右衛門などが騒動を防ぐべく手を打たざるを得ない。

お家騒動が始まる。

それほど複雑に絡み合った物語ではないが、

葉室さんの文章には、つい引き込まれ、途中でやめるわけに行かず、

あっと言う間に最後まで読んでしまう。

颯太が次第に成長してゆく姿は楽しく、

登場する人物の凛とした姿が、見事に描かれていると思う。

登場する女性たちも素晴らしい。
草笛は村の童たちがお互いの居場所を知らせるために吹く。

葉室ファン必読の一冊である。









by toshi-watanabe | 2017-09-17 08:34 | 読書ノート | Comments(0)