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幸田 真音著「大暴落 ガラ」を読み終える

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幸田真音さんの最新作「大暴落 ガラ」を読み終える。
「ガラ」とは、相場用語で急激にすべてが値を下げること。

暴落よりもさらに恐怖感をともなう強烈な下げを意味し、

通常は回復までに長時間を要する。

時は今から2年後、この物語の主人公、

三崎晧子(みさきこうこ)が日本初の女性総理大臣に

就任したところから、この物語は始まる。

前総理の山城泰三が病のために続投不能に陥り、

次期総理選出のため、突然政権与党内の総裁選挙へ突入。

候補者5名のなか晧子は紅一点、大接戦の末、

晧子を破って与党の新総裁に選ばれたのは小関嗣郎、

前評判通りの結果で与党の古株である。

ところが周囲の予想に反して、内閣総理大臣への

首班指名されたのは三崎晧子だった。

本来であれば、与党の総裁がそのまま総理大臣になるのが

通例なのに、思いがけなく与党の一部に加えて野党側の支持を受け、

晧子が選ばれ、大騒ぎとなる。

組閣人事を進めている最中に、東京に巨大な自然災害の発生が

起こりそうな気配になる。

東京の下町を流れる荒川の上流、埼玉県の秩父地方に大雨警報が出、

猛烈な勢いで増水し東京に向かって流れ始め、しかも大型台風が二つ、

東京方面に近づいているという深刻な状況にあり、

荒川の堤防が決壊する恐れが出てきた。

東京の下町一帯が浸水するばかりでなく、地下鉄などの地下に

大量の水が流れ込んでは大変な事態になる。

総理は緊急非常事態の宣言に追い込まれる。

時を同じくして、ロンドン為替市場で突然円売りが始まり、

中央銀行である日本銀行の債務超過が危惧されたのか、

日本の通貨の失墜がどこまで行くのか、金融関係者に激震が走る。

新規国債の入札にも応じる金融機関もなく延期となる。

若い頃、米国系の投資銀行に在籍した経験のある晧子も懸念する。

東京の大災害が起こった場合には、さらに事態を悪くする。

過去にハリケーンによる大災害がニューヨークの金融市場に

ダメージを与えたこともある。

現場では夜を徹して最大限の対策をたてたのだが、荒川は氾濫し、

結局700名近い犠牲者を出してしまう。

総理の指揮にも拘らず、担当大臣の動きは鈍く、

与野党ともに防災に無関心で行動せずの状況だった。

それにも拘らず、トップの初動が手遅れだったと非難するばかり。

船会社のクルージング船に被災者を避難させたり、

総理自ら色々と手を尽くし、犠牲者を増やさずに済んだ。

天候の回復とともに、復興作業は直ちに開始、円安も収まり、

心配されていた国債入札も再開される。

大暴落になる事態は何とか防げた。

臨時国会が召集され、冒頭に三崎晧子総理大臣は

所信表明演説を始める。

野党からの嫌がらせやヤジが盛んに飛ぶ中、晧子は滔々と思いを語る。

この場面が物語終盤のハイライト、この小説の最も面白い場面である。

現実に即した場面もあり、

巨大な自然災害が首都東京に起きたら、どうなるのだろうと、

大いに考えさせられた。

過去の災害を思い返してみても、いつも後手後手にまわっている。

反省総括はするものの、

その後この経験が対策に全く生かされていないのが実情。

同じことの繰り返し、情けない限りだ。

この小説、日本初の女性総理を主人公に持ってきたところが、

一つのポイントなのだろう。

小池百合子東京都知事とダブるようなところも見られた。




by toshi-watanabe | 2017-04-04 10:56 | 読書ノート | Comments(0)