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内田 康夫著「終幕(フィナーレのない殺人」を読む

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久し振りに、内田康夫さんの作品が
新装版文庫本で発行されたので買い求める。

この作品を読むのは初めてである。

「終幕(フィナーレ)のない殺人」と題した推理小説。

この作品は昭和627月に発表されて以来、

何度か改訂版が発行されている。

ご存知素人名探偵、浅見光彦が登場するが、

今まで読んできた「旅情ミステリー」とは全く異質の作品。

古典的な密室殺人事件の範疇に入るのだろう。

名所旧跡巡りなど全然楽しめない推理小説、

作者はあえて、こうした作品を書かれたようだ。

浅見光彦の元に一通の招待状が届く。

芸能界の大物、加堂孝次郎が箱根の別荘で開く

晩餐会の案内だった。

同伴での参加を求められ、光彦は幼馴染の

小学、中学と一緒に通学した仲の野沢光子を誘って参加する。

光・光コンビである。

毎年開催されている、箱根の別荘での晩餐会だが、

昨年、一昨年と不審な死亡事故が起きていた。

浅見への招待は、不吉な事態の阻止を依頼するものだったのだろうか。

パーティに招待されたのは、浅見達二人を除き、

12人の俳優、女優、タレントなど、

今を時めくスターたちとその関係者。

他には執事夫妻、実は往年の俳優と女優という経歴の持ち主。

ところがパーティが始まったものの、肝心の加堂の姿は見えず。

妙な音楽が流れたり、演奏をしていたバンドが突然いなくなったり、

駐車場の車がいつの間にか、すべて消えたりと、不審なことが続き、

俳優の一人が突然殺害される。

誰かがフグの毒を盛ったらしいと推察するものの実態は不明。

救急車や警察を呼ぼうとしても、電話は通じず。

芦ノ湖湖畔のすぐ近くとはいえ、鬱蒼とした森の中の一軒家。

その後も次々と殺人が起きる。

翌日明け方になり、俳優の事務所からの連絡で、

やっと警察が動き別荘にやってきて、捜査が始まる。

もやもやしていた浅見光彦の頭脳が働き始め、推理を働かせる。

その推理を警察が裏付けるという、浅見シリーズの

いつものパターンとなる。

この小説は、最初から終わりまで、森の中のお屋敷で

起こる事件、そして俳優やタレントたちの入り組んだ

愛憎関係が事の起こりをもたらしている。

別荘の主の加堂自身も結局殺害される。

加堂が意図していた趣向とは全く別の方向に事態は進んで、

こうした連続殺人事件の発生となってしまった。

いつもの浅見シリーズを念頭に、この作品を読むと、

期待外れの感を抱かざるを得ない。

古典的な密室殺人事件として読めば、

トリックの謎解きも面白いだろう。


by toshi-watanabe | 2017-03-07 09:18 | 読書ノート | Comments(0)

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by toshi-watanabe