葉室 麟著「あおなり道場始末」(双葉社)を読む

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久し振りに葉室作品を読む。

「小説推理」に連載されたいた作品で、単行本としてつい最近

双葉社から刊行された時代小説、「あおなり道場始末」である。

豊後の国、坪内藩四万八千石(実在しない、架空の藩)の

城下町にある剣術の青鳴道場が舞台である。

神妙活殺流を編み出した先代。青鳴一兵の死から

間もなく1周忌を迎える。

道場を継いだのは長男、権平、まだ二十歳と若く、

武術に優れた容貌には程遠く、

いわゆる昼行燈のような性格の持ち主。

剣術道場主としては頼りなく、門人から見捨てられ、

門弟は全くいなくなってしまった。

権平には妹の千草(17歳)と弟の勘六(12歳)がいる。

母親は早くに亡くなっており、権平が親代わりの役割なのだが、

千草は武術に優れ、鬼姫と呼ばれていた。

勘六は幼いころから利発で、師の矢野観山をして

あたかも菅原道真公の再来ではと褒め称えられるほど。

「天神小僧」と陰口をされることも。

三人兄弟、道場にだれも来なくなり、

生活の糧に困り果て、道場破りを思いつく。

この城下町には、青鳴道場の他に新当流、無念流、

雲弘流、心影流、それに柳生流の五つの流派の武術道場があった。

父親が生前伝授してくれた神妙活殺流を武器に、

権平は弟妹を伴い、他の道場へ乗り込み他流試合を申し込む。

見事権平は道場破りを成功させ看板代をせしめる。

その一方で、青鳴一兵は何らかの理由で、

他の道場主に殺害されたことに間違いないと権平は確信。

そんな折、突然勘六が何者かに拉致される。

実は、十三年前、すでに亡くなった側室、お初の方が

産んだのが竹丸で、正室お与江との間で争いがあったため、

その竹丸は行方知らずとなっていた。

ところが藩主の跡継ぎとして竹丸を担ぎ上げるために、

その行方を捜す一派と、それに反対する一派との争いに巻き込まれることに。

どうやら勘六が竹丸らしいと判明し、

物語は思わぬ方向に進展する。

物語はいろいろと進展するのだが、

最終的には、権平は亡き父親の仇を取り、汚名を雪ぐ。

兄弟3人で新しい生活を求めて江戸に行く下りで

この物語は幕を閉じる。

江戸で開く道場の名前は「あおなり道場」にしようと話し合う。

いかにも葉室流の筆致で、筋書きが実に面白い。

読み手を飽きさせず一挙に読み終えさせてしまう。

楽しく読める時代小説である。



by toshi-watanabe | 2016-12-29 11:55 | 読書ノート | Comments(0)