葉室 麟著「津軽双花」を読み終える

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(表紙の挿画は中川学さん)



葉室麟さんの最新作「津軽双花」を読み終える。
書籍表紙の帯には、
「この戦い、女人の関ヶ原にございます」とある。
日本を東西に二分した戦い、「関ケ原の合戦」から十三年、
石田三成の娘、辰姫(たつひめ)と徳川家康の姪、満天姫(まてひめ)が
津軽家に嫁し、再びの因縁に相見えることになる。

津軽家を継いだ藩主信枚(のぶひら)の正室として迎えられたのが、
石田三成の三女、辰姫である。
三成一族はみな斬首の憂き目になったはずだが、辰姫は生き延び、
高台院(秀吉の正室、寧々、北政所)の養女となり、
津軽家に嫁いだ。
辰姫の兄の重成(三成の次男)も縁あって、津軽家に出仕、
名前もかえて杉山源吾を名乗っている。

平穏な生活が送れるはずだったのだが、
天海僧正の思惑もあり、家康の異父弟、松平康元の娘、
満天姫(まてひめ)が家康の養女となって、津軽信枚に嫁ぐことになる。
正室が二人というおかしな事態に。
満天姫はその前に、福島正則の養嗣子、正之に嫁し、
嫡男直秀を産んでいるのだが、正則に実子が生まれたため、
世の常とはいえ、正之は廃嫡の身となり、若くして命を絶つ。
満天姫は直秀を連れて実家に帰されていた。
満天姫は幼い息子の直秀を伴い、津軽家に嫁ぐことに。

津軽家に嫁ぐ前、天海は満天姫を伴い、大舘陣屋を訪れる。
このころ、辰姫は上野国大館にいた。
関ケ原の功により、大館二千石を与えられた津軽家では
ここに陣屋を置いていた。
辰姫は陣屋に居室を与えられて、日々を過ごしていた。
津軽信枚は津軽と江戸を往復する間に大館に立ち寄る。
満天姫が、江戸からはるばるやってきたのは、
輿入れの前に辰姫を追い出しておこうという天海の思惑もあった。
客人を大広間に案内する辰姫、案内される満天姫の
茶室での初対面の場面が、実に見事に生々しく描かれている。
この小説一番の読みどころ。
辰姫は一子平蔵を授かるものの、
病に倒れ、33歳の若さで命を全うする。
死の間際に、満天姫が辰姫を見舞いに訪れる。
津軽家の家督は必ず、平蔵に継がせると約束する。
満天姫には実子の直秀の他に、信枚の津軽の側室が
産んだ男子、万吉を手元に引き取り育てていた。
(満天姫の実子だという説もある。)

二人の姫を中心に繰り広げられる、
葉室流の感動を読者に与える一編である。

この本には、書名となっている「津軽双花」のほかに、
三つの短編作品が載っている。
いずれもすでに発表済みの作品。

「鳳凰記」は「決戦! 大阪城」、
「孤独なり」は「決戦! 関ケ原」、
「鷹、翔ける」は「決戦! 本能寺」に
それぞれ載っている。
「鳳凰記」は、茶々と秀頼が家康から上洛を求められる
経緯を中心に物語が語られている。
帝が聚楽第への行幸の折り、茶々をお目にとめられ、
鳳凰のごとき女人だと思われたそうだとの話が出てくる
「孤独なり」は、関ケ原で敗れた石田三成の物語。
西軍が負けるように仕掛けたのは三成だという、
興味深い筋書き。
「鷹、翔ける」は、明智光秀を支えて最も力を発揮した
家臣、斎藤内蔵助利三(としみつ)の話。






by toshi-watanabe | 2016-08-09 10:50 | 読書ノート | Comments(0)