折々の記

tnabe.exblog.jp

日々見たこと、 感じたこと、気づいたことをメモする

ブログトップ

内田 康夫著「しまなみ幻想」を読む

d0037233_14500507.jpg


内田康夫さんの著書「しまなみ幻想」を読む。
最近、実業之日本社文庫として出版されたが、
すでに2002年11月、単行本が光文社から発行されている。
書名にある通り、本州四国を結ぶ3本目の連絡高速道路、
通称「しまなみ海道」で起きる事件がテーマ。
正式には「西瀬戸自動車道」で、広島県の尾道と
愛媛県の今治をそれぞれ起点とし、
向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島などを巡り
海峡部に10本の橋梁(尾道大橋を含めて11本とも)を渡る。

この作品が書かれたときには、「しまなみ海道」が開通していたものの、
島嶼部自動車専用道路の一部が未整備、
その後、2006年に全面開通となった。
「しまなみ海道」は自動車専用道路のほかに、
歩行者、自転車のための専用道路も併設されている。
歩行者の通行料金は無料、また自転車も現在期限限定で無料。
数年前に、四国巡りのツァーの折に、この海道を通り、
瀬戸内の素晴らしい眺めに感嘆したものである。

因島はかって村上水軍(海賊)の拠点だったところ。
この作品でも、その末裔に当たるのか、村上姓の人物が登場。
生口島には、「西の日光」と言われる重要文化財の宝庫の、
「耕三寺」がある。
大三島は「神の島」と呼ばれ、この作品にも登場する
「大山祇(おおやまづみ)神社」が鎮座している。
伯方島は、「伯方の塩」で名高い。

この作品のテーマは、人が亡くなる事件の発生に対して、
警察が十分に調べもせずに事故あるいは自殺として
処分している現実に視点を当てたもの。
しまなみ海道の橋から女性が墜落死する事件が発生。
捜査本部が設けられたものの、自殺として処理される。
ところが、墜落死した女性が橋の上を歩いている姿を見たという
目撃者が2年後に橋から飛び込んだのか、遺体が海上で見つかる。
不審な点が次から次と表面化してくるのだが。

今治で手広く造船会社を営む村上家に嫁いだ美和が最初の犠牲者。
美和の娘、村上咲枝は今15歳の中学生、ピアノが得意で、
週末東京の駒込までピアノの指導を受けに出かけている。
ピアノの指導に当たる、島崎香代子は村上美和と
音大時代の親友、プロの演奏家として名を成すものの、
事故に遭遇しプロをあきらめピアノを教えている。
美和の依頼を受けて、香代子は咲江の指導を引き受けた。

浅見光彦シリーズで時折登場する、
東京北区上中里にある「平塚亭」に香代子が散歩がてら
咲枝を連れてやってくると、偶然光彦と顔を合わせる。
香代子は光彦と光彦の母親雪江とすでに顔なじみ。
特に雪江は香代子の若いころから知っている。
そこで話を交わしているうちに、咲枝は母親の美和が
2年前に不慮の死を遂げているのを口にする。
自殺として処理されていることに疑問を感じており、
母親が自殺するはずはないと、光彦に話す。
光彦探偵は村上美和の死に関心を抱き、
事件当時の地方紙を調べ、いよいよ現地へ出かける。

村上咲枝が誘拐され、危うい場面もあるが、
殺人事件の犯人を突き止め、見事事件を解決する。

作者がしまなみ海道を舞台にした作品を書いた背景には、
当時の愛媛県知事のお墨付きがあった。
しまなみ海道が全通した(実際はまだ一部は一般道を
通過していたのだが)のを機会に、
一種の村おこし的な効果を狙えるミステリーを
書いてくれないかーーーという知事の発言があったようだ。

因みに、愛媛県から東京までピアノを習いに通うなど、
現実離れした発想だと思うが、「浅見光彦倶楽部」の会員に
モデルぴったりの埼玉在住の女性がいたとか。
その女性は子供の頃、愛媛県新居浜から東京に通っていた。



by toshi-watanabe | 2016-06-28 14:50 | 読書ノート | Comments(0)