内田 康夫著「死者の木霊」を読み終える

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つい最近、新装版文庫として講談社から出版された、
内田康夫さんの「死者の木霊(こだま)」を読む。
実は、この作品は内田さんの第一作、デビュー作品である。
書かれたのは昭和55年(1980)、
当時無名だった内田さん、この作品は自費出版された。
翌年、朝日新聞の読書欄で作品が紹介され、知られるようになる。
商業ベースで講談社文庫として世に出たのは、昭和58年(1983)だった。

木曽山脈を水源地として、長野県飯田市の南縁に沿って流れる松川、
かっては「あばれ松川」の異名を持つ河川だったが、
治水のためにダムが建設された。
その松川ダムで七つの部分に切り分けられた、バラバラ死体が
発見されたのが事件の発端。
地元の飯田署に捜査本部が置かれ、
捜査主任に選ばれたのが、竹村岩男巡査部長。
この作品のあと、竹村警部シリーズの作品が書かれ、
“信濃のコロンボ”と呼ばれ、のちには浅見光彦とも巡り合う。
当然、この作品には浅見探偵はまだ登場しない。

遺体の身元は判明し、遺体を運んだとされる人物も割り出される。
遺体を切り分けた現場も確認できたのだが、
殺人犯と目される人物(遺体の甥)とその妻は行方不明。
数日後に、その夫婦が戸隠キャンプ場近くの川に架かる橋に
首つり自殺をしているのが発見される。
これで一件落着とされて、捜査本部は解散。

ところが竹村巡査部長は疑念が晴れず、
上司の指示を無視して、勝手に動き始める。
ある会社の社長の秘書を務める女性から情報を得ようとする。
その女性の結婚式場に乗り込み、花嫁の着替え室に入り、
話しを聞きたいと竹村は強引に詰め寄ると、
花嫁は挙式のあとにしてほしいと伝える。
式の始まる前に、花嫁衣裳のまま女性は飛び降り自殺。

週刊誌にも取り上げられ、
竹村巡査部長は、停職1カ月、減給百分の十、十二カ月という
処分を受けてしまう。
処分にもめげず、自費を使って事件の現場を飛びまわる竹村。
鉄壁の隠蔽工作を見事崩し、事件を解明、
真犯人の逮捕に至る。

小説の舞台は、飯田、東京、青森、戸隠、鳥羽、軽井沢、
松阪と転移させながら、季節感に合わせた風物描写にも
筆が行き届いて、殺人事件の陰惨な空気を和らげている。

竹村刑事部長には2階級特進の話も。

内田作品のまさに原点といえる作品である。



by toshi-watanabe | 2016-06-09 13:30 | 読書ノート | Comments(0)