内田 康夫著「鄙の記憶」を読み終える

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引き続き、内田康夫さんの著書「鄙の記憶」を読み終える。
この作品は、読売新聞社の依頼により、
1997年8月から1998年3月まで「週刊読売」に連載後、
一部加筆修正して単行本として、同年4月に読売新聞社から出版された。
その後、2000年11月幻冬舎ノベルスとして刊行され、
2002年4月に幻冬舎文庫、2006年10月に角川文庫に収録された。
本年3月、新潮文庫から新たに出版されたものを今回読む。

作品は2部に分かれている。
第1部は、静岡県大井川鉄道の寸又峡(すまたきょう)、
第2部は、秋田県雄物川の大曲(おおまがり)が舞台となっている。
それぞれで起きる殺人事件が何の関連もないように見えて、
実は繋がりがあり、名探偵、浅見光彦が事件解決の糸口を見つける。

最初にプロローグの部分があるが、
連載時にはなく、単行本として刊行される際に追加されたもの。
日本一ともいわれる大曲の花火大会の夜、
高齢の横居ナミは誘われたものの花火会場の河原には出かけず、
独り屋敷の縁側で、木の間越しに打ち上げ花火の競演を眺めていたところ、
突然二人連れの男たちが屋敷に入り込み、金庫に向かうが
ナミに気付き、襲い掛かり殺害する。

供島武龍という主人公が登場する。
この主人公の設定が面白い。
供島は滋賀県長浜の郊外にある浄土真宗の末寺の長男として生まれ、
僧侶を継ぐ立場にあったのだが、父親が嫌いで、勘当当然に家を飛び出し、
新聞記者になった。
所が父親がなくなり、母親から泣きつかれ、時々法事のために帰郷している。
今は静岡県島田市の通信部に籍を置き、女房の春恵とともに業務をこなす。
島田市役所記者クラブの仲間でテレビ局のカメラマン久保一義は
寸又峡へ写真を撮りに出かけるが飛龍橋の下で死体で発見される。
地元警察署では、事故死か自殺の線で捜査を開始するものの、
供島には久保は殺害されたものと推察する。
事件直前に、久保は供島の家に電話を入れるが、供島は留守で春恵が電話を取る。
その時に久保が言ったのが「面白い人に会った」。
この言葉が後までひっかかり、結局事件解決のキーワードとなる。

供島が個人的に久保の事件を調べていると、大間ダムに死体が浮きあがる。
ホテルの宿泊者名簿から、死体の主は川口元正という男。

そこへ浅見光彦探偵が登場する。
実は殺害された久保の未亡人、香奈美は光彦と高校の同窓、
文芸部で光彦の2年後輩だった縁で、
久保の死亡に疑問を抱く香奈美が光彦に調査を依頼したもの。
二つの事件は同一人物による殺害事件とみて、
警察署には邪魔扱いされながら、
供島と光彦は共同作戦で調べて行く。
久保と川口の間には接点が見つからないものの、
何らかのつながりがある予感を光彦は抱く。
川口というのは偽名で、実は大曲で起きた殺人事件の
実行犯と判明し、捜査は秋田県の大曲の警察署に移る。

光彦は問題を残したまま東京に戻り、
物語は第2部に移る。
久保は時々供島の家に遊びに来ることがあり、
供島は酔って機嫌のいい時には、大曲時代の
写真を久保に見せたことがある。
供島は大曲の通信部に勤務したことがあり、
久保が残したメッセージ「面白い人」が見つかるのではと、
大曲へ単身でかける。
ところが供島は大曲で殺害され、いよいよ事件は闇の中。
そして光彦探偵も大曲へ向かう。
真犯人を突き止めるまでの、
冴えた推理と事件の展開、いかにも光彦シリースの一冊である。




by toshi-watanabe | 2016-04-17 10:29 | 読書ノート | Comments(0)