杉本 章子著「カナリア恋唄」を読み終える

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杉本章子さんの「カナリア恋唄」を読み終える。
この著書はサブタイトルにある通り、「お狂言師歌吉うきよ暦」の第4作で
お狂言師歌吉シリーズの最終編なのだが、
著者の杉本さんが昨年12月4日乳がんで逝去され、
残念ながら未完のままである。
因みに第1作が「お狂言師歌吉うきよ暦」(歌吉、お狂言師になる)、
第2作が「大奥二人道成寺」(歌吉、大奥で舞う)、
そして第3作が「精姫様一条」(歌吉、花咲く)。

主人公のお吉は六つの歳に、江戸京橋は桶町で踊りの師匠をしている
三代目水木歌仙に弟子入りした。
踊りの筋もよく、華があると師匠に褒められ、
歌吉という名取名をもらった後も、厳しく仕込まれる。
歌仙はまた、大名家の奥向きへ上がって狂言や踊りを
ご覧に入れる、お狂言師の筆頭と目されていた。
お出入りのお屋敷からお呼びがかかれば、
より抜きの弟子たちで座組をして参上する。
姉弟子の歌のぶとともに歌吉は水木一座の若手として
舞台に立つ女役者でもあった。
ある時、外桜田の毛利様上屋敷奥御殿に参上して、
加賀美山旧錦絵をご覧に入れた。
これは人気の狂言だが、その狂言で忠義の部屋方お初を
演じた歌吉は、幕の後、さるお部屋様のお呼びを受けた。
この時に頂いたのが、見事な細工の竹籠に入れられたカナリア。
当時日本国内で見られた金糸雀ではなく、異国の舶来品。
歌吉が大事に育てると、やがてカナリアは落ち着き、
声を聴かせるようになる。

お狂言師歌吉には、裏の顔があった。
あることから、お小人目付の日向新吾と岡本才次郎の手駒となり、
様々な事件にかかわってきた。
その過程で、歌吉と新伍の仲が親密となり、
互いに愛しい感情を抱くようになる。
目付首座の井手内記の命により、日向新吾と岡本才次郎は、
紀州家と大奥に纏わる事件を追っていた。
仕事の手駒として使っている歌吉を好きになっている新吾だが、
母親の死去により、嫁取りをせっつかれていた。
踏ん切りがつかぬまま、姉のすすめるお徒衆の家の
娘、由乃と祝言を挙げる。
その一方で歌吉はお狂言師の道に進もうとするものの、
新吾への思いを断ち切ることができない。

飼っているカナリアは雌鳥であることが判明し、
雄のカナリアを入手し番いにしてあげる。
著書名の「カナリア恋唄」とは歌吉自身の恋唄なのかもしれない。
新吾の妻となった由乃は芳しくない過去があり、
新吾とも、また新吾の父親ともうまく行かず、
新吾は由乃を離縁する決意をするところで、
この作品は終えている。
好き同士の新吾と歌吉が晴れて夫婦となるのかどうかは、
分からないままである。
果たして著者はどんな結末を考えていたのだろうか。

著書の巻末に、女優の加賀まりこさんが、
「妹に」と題して追悼文を書かれている。
1993年3月、杉本章子さんの短編「夕化粧」が
名古屋名鉄ホールで上演された時、
加賀まりこさんは「おふじ」という主人公を演じられた。
その公演の場に、杉本さんはご両親とともに来られ、
一緒に楽屋を訪れられたのが初めての出会い、ご本人は車椅子だった。
それから15年以上も過ぎた、2000年の頃に
加賀さんは文春文庫の「信太郎人情始末帖」を読み、面白くて
すっかり魅了され、感想を伝えたくて出版社に電話を入れた。
すぐに杉本さんは加賀さんに連絡を取り、それからは週に1度、
深夜の長電話が始まった。
最後の電話は、亡くなる10日前の11月24日、まだ普通に元気な声だった。
その時に、「お狂言師歌吉うきよ暦」シリーズの終わりについて、
話し合われた。 その2日後に意識不明に。
お吉と新吾の終わり方については杉本さんな迷っていた。
「二人とも死ぬということで構成作っちゃった」とも言っていた。
電話だけの交流だったが、姉のように杉本章子さんを見守ってきた
加賀まりこさんだったのではないだろうか。


Commented by amtask at 2016-03-21 04:19
ご無沙汰しています。
↓ 倉渕にいらしたのですね。
椿・クリスマスローズ・スノウドロップ・ムスカリ等、バンクーバーと同じような花が咲いているで、
気候が似ているのでしょう。
山の中で咲く花は、色がきれいですね。
それにしても、スギ花粉の景色凄いですね。
化学肥料をヘリから撒いているのかとと思いました。
私は花粉症ではないのですが、この景色見て、
怖くなりました。
Commented by toshi-watanabe at 2016-03-21 10:24
amtaskさん、
コメントをいただき有難うございます。
倉渕の気候はバンクーバーに似ているかもしれません。 冬の間でかけませんでしたので、今回は3か月ぶりでした。
スギ花粉すごいでしょう。
内科医院へ行くと、マスクをした患者さんでいっぱいです。
私も幸い、医者に行くほどの症状は出ていません。
by toshi-watanabe | 2016-03-16 14:07 | 読書ノート | Comments(2)