車 浮代著「えんま寄席」を読み終える

d0037233_09512328.jpg
d0037233_09513466.jpg


車浮代さんの作品を初めて手にする。
読み終えたのは「えんま寄席」、
サブテーマとして、「江戸落語外伝」とある。
六代目圓楽師匠も絶賛とある通り、とにかく面白い。

前書きと言えるのか、「まくら」で書かれているものを
そのまま紹介します。

「昔から、人と人とは合縁奇縁なんぞと言うように、
 思わぬ場所で思わぬ人がつながってるもんだ。
 つながった縁は良縁だけとは限らない。
 縁が元でこじれることもごまんとある。
 何か不都合が起こった日にゃあ、己のため誰かのために、
 人は平気でしらを切り、いとも簡単に嘘をつく。
 嘘が嘘を呼び、つき重ねるうちに、もはや何が本当で何が嘘か、
 当人にはわからなくなることもあれば、善かれと思ってついた嘘が、
 よもやの厄介につながるってこともある。
 とかく浮世はままならぬ。
 嘘に始まり、嘘に終わればいいけれど、嘘つきは泥棒の始まり
 とはよく言ったもので、強請り、たかり、盗み、邪淫、火付け、
 殺生・・・・・と、人は多かれ少なかれ、罪を犯す。」

「ここは、死人の魂が集まる地獄の入口―――。
 赤鬼と青鬼が門を守り、閻魔様によって、
 人の生前の善悪が吟味され、天界行きか地獄行きかを裁かれる。
 あたいは、神武天皇の道案内をした八咫烏(やたがらす)の子孫。
 そのあたいが仕える閻魔様は、まだ着任したばかりの
 新参者だが、現世にいた頃の功績が認められて、
 大抜擢されたってぇお方だ。
 『罪を憎んで人を憎まず』を信条に、一本筋の通った裁きをなさる。」

いよいよ第壱席の始まりである。
お題は「魚屋の女房」、お馴染みの落語「芝浜」のお先ご登場する。
魚屋亭主の勝五郎はある朝魚仕入れに出かけるが時間が早い、
休んでいた浜辺で革の財布を拾う、中には大金があり、家に戻ると
近所の仲間を呼んで大酒飲み。
目を覚ますと、財布がなくなっている。
女房のお先は夢を見ていたのだろうと嘘をつく。
しぶしぶ納得した勝五郎は一念発起、酒を断ち仕事に励む。
役所に届けて置いた財布に持ち主は現れす拾い主の手に。
女房は勝五郎に詫び、事実を話すと、勝五郎も納得。
女房の勧めで久しぶりに酒を一杯となるのだが、
落語の落ちでは、「また夢になるかも知れない」と勝五郎は杯を置く。
ところが、その続きがあり、お先は閻魔様から追及される。
この辺りから普段、高座で語られる落語とは趣が異なる。
そして閻魔様の裁きを受けて、お先は亭主ともども、
吸喚地獄行きを命じられる。

第弐席のお題は「玄能と鎹(かすがい)」で、
「子別れ」(「子は鎹」とも)の亀吉が登場する。
大工の熊五郎は蟒蛇(うわばみ)の上に酒乱ときている。
夫婦喧嘩の末におかみさんは倅の亀吉を連れて家を飛び出す。
熊五郎は心を入れ替え一生懸命働き大工の頭領に。
3年後、うなぎ屋で親子3人がめでたく再開するのだが。

続いて第参席は「土蔵の中」と題し、
「火事息子」の定吉が登場する。
伊勢屋の若旦那、藤三郎は子供の頃から火事が好き、
好きが高じて実家を勘当され、臥煙(がえん、定火消し)となる。

そして第四席は「九十九(つくも)の夜」と題し、
「明烏」の浦里が登場する。
日向屋半兵衛の跡取り息子、時次郎は堅物。
将来を心配した半兵衛は、札付きの若者に時次郎を吉原へ連れて
行くうよう頼む。
そこで時次郎が出会うのが花魁の浦里。

「下げ」でこの四話の総括をしている。
また、こんなことも書かれている。

「青鬼が地獄の門番を志願したのは、赤鬼が言うように
 人間界に絶望したからではなく、自分ば死んだ後の
 ことが心配だったからなんじゃないかと思う。
 地獄に堕とされる母親を見送り、自分に罠を仕掛けた
 作治を見送り、親方、父親、許嫁(いいなずけ)、
 可愛がっていた弟分・・・・と、
 自分にかかわる人々の死後と、あたいたち八咫烏の
 目を通して浄玻璃鏡に映し出される、
 人間界で起こっているあらゆる出来事を見続けてきた。」

著者の父上は家でよく落語のレコードをかけていたと、
「あとがき」に車さんは書かれている。
車さん、幼いころには、落語を十分理解できなかったが、高校生の頃、
落語にすっかり飲み込まれたそうだ。
2008年から、三遊亭圓窓師匠の指導を受け、
「たらちね」や「金明竹」を演じられるようになり、
さらには、親子の情愛を描いた「火事息子」が好きで、
ついに挑戦された。

落語の筋をある程度知っているだけに、
実に面白く興味深く読む事が出来た。




by toshi-watanabe | 2016-03-05 09:52 | 読書ノート | Comments(0)