澤田 瞳子著「ふたり女房」を読み終える

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徳間時代小説文庫の最新刊として先月出された、
澤田瞳子の著書「ふたり女房」を大変興味深く読み終える。
「京都鷹ヶ峰御薬園目録」とある通り、
江戸時代後期、幕府直轄の薬草園で働く
1人の女性が薬草を通じて、巷で次から次と起こる悩みを解きほぐして行く。

実は、この作品のシリーズ第二作「師走の扶持 京都鷹ヶ峰御薬園目録」が
昨年末に出版され、この著書をすでに読み終えている。
読む順序が逆になったが、それぞれ独立した作品として読めるので、
何ら問題はないだろう。

登場する主人公は元岡真葛というまだ21歳の女性。
母親は棚倉家の御前、従四位下左兵衛佐棚倉静昴の娘、
倫子だが、真葛が3歳の砌に他界、
父親は御門跡医師だが、さらに医学を極めたいと長崎に向けて
旅立ったまま行方知らず。
幼い真葛は、禁裏御殿医と鷹ヶ峰御薬園預を兼ねる
藤林道寿守之の家で養女として育てられる。
同じく夫婦で藤林家に養子入りした義兄の匡と
その妻(真葛の義姉)初音それに夫婦の息子
辰之助が同じ屋根の下に住む。
道寿はすでに亡く、匡が藤林家を継いでいる。

鷹ヶ峰御薬園は、江戸の小石川御薬園、長崎の十善師郷御薬園とともに
幕府直轄の薬草園である。
京の町を見下ろす、1400坪余りの薬草園を、真葛は荒子達を仕切って、
薬園の手入れから生薬の精製までを手掛けている。
同時に医療を学び、医師としての優れた能力も備えている。

6篇の物語から構成されているが、それぞれが独立した作品でもある。
「人待ちの冬」、「春愁悲仏」、「為朝さま御宿」、「ふたり女房」、
「初雪の坂」、「粥杖打ち」。

第一話「人待ちの冬」は、評判の悪い薬種屋「成田屋」を巡る騒動に
真葛がかかわることになる。
第二話「春愁悲仏」は、当代きっての本草学者、小野蘭山の愛弟子、
延島杳山が登場する。
真葛とは旧知の間柄、どうやら真葛は杳山の事が気になるらしく、
馴染みの薬種屋「亀甲屋」の若旦那定次郎としては面白くない。
そんな三人が、数少ない真葛の患者まで乗り替えた、
妖しい民間療法の真実に迫っていく。
薬効あらたかな観音像の意外な正体が明かされ、
その裏には隠された過去の事件。

第三話「為朝さま御宿」は、三條西家の子供の
疱瘡を切っ掛けに藤林家の先代の主も関係した
意外な事実が暴かれる。
第四話「ふたり女房」は、二人の女房を持つ男の騒動を
通じて、傍からは計り知れない夫婦の綾が描かれ、
己のしっかりした意思を持ち、行動力のある、
二人の女性が見事に生き生きと描かれている。

第五話「初雪の坂」は、御薬園の薬の盗難を発端に、
藤林家の名誉を傷つけかねない事件が起きる。
ある少年の厳しい人生には胸を痛めてしまう。
第六話「粥杖打ち」は、宮内で行われる「粥杖打ち」
から始まった、一人の女性の妊娠騒ぎが綴られる。
小正月十五日、宮城では望粥とも呼ばれる小豆粥を食する。
粥杖とはこの粥を炊いた際の杓子で、これで子のいない女性の
尻を打てば、男児を産むと言い習わされていた。
老齢の貴族が孫ほど年の離れた女房を追い回したり、
好意を抱く若公卿を上蘢が狙ったりという騒動が起きるのが恒例。
初めて匡のお供をして参内した真葛も粥杖打ちに合う。

延島杳山が真葛を、小野蘭山が行う薬物採取の旅に誘う。
真葛は江戸行きの希みを義兄の匡に話すものの、
匡の同意は得られず、それでも真葛の決意は固い。

こうして江戸に出てからの話になるのだが、
このシリーズの第二作「師走の扶持」となる。



by toshi-watanabe | 2016-03-01 09:30 | 読書ノート | Comments(0)