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葉室 麟著「神剣」を読み終える

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葉室麟さんの最新作「神剣」を読み終える。
サブタイトルに「人斬り彦斎(げんさい)」とある通り、
幕末、人斬り彦斎と呼ばれた熊本藩の志士、河上彦斎の
苛烈な人生と志が描かれている。

安政7年(1860)3月3日、水戸、薩摩藩を脱藩した
浪士18人が江戸城桜田門外で時の大老井伊直弼の
登城行列に襲い掛かり、直弼の首級をあげた。
その中の元水戸藩士の4人が、細川越中守江戸藩邸に駆け込む。
門番の足軽たちは足すくむばかり、
そこへ現れて声をかけたのが、五尺足らずの小柄な茶坊主、
色白で顔立ちは女人ではないかと思うほどの美貌の持ち主。
外見に似ず、血に染まった浪士たちにてきぱきと対応する。
この茶坊主が、この物語の主人公、河上彦斎である。

肥後の国、熊本藩五十四万石、御花畑表御掃除坊主の彦斎は、
熊本藩の兵学師範、宮部鼎蔵に師事し、
そして鼎蔵が若き日の吉田寅次郎(松陰)と話し合う場に
同席した時に耳にした話が彦斎の頭から離れない。

幕末、尊王派、攘夷派が力をつけ、徳川幕府の屋台骨が
緩んでくる。
脱藩した彦斎は尊王攘夷を信奉し、京や長州で活動を始める。
師と仰ぐ鼎蔵が京で新選組の刃に倒れ、
彦斎は神のお告げだと、人斬りの道に入り込んで行く。
因みに幕末の四大人斬りと言われる人たちがいる。
河上彦斎はこの中の一人で、残りの三人は薩摩の田中新兵衛、
土佐の岡田以蔵、そして薩摩の中村半次郎。

長州の桂小五郎、久坂玄瑞、高杉晋作、大村益次郎などとの交流もあるのだが、
彦斎は筋金入りの尊王攘夷信者、他人の言葉を聞く耳を持たない。

勝海舟の義弟に当たる佐久間象山が彦斎らにより暗殺される。
象山を高く評価していた海舟を落胆させる。
益々「人斬り彦斎」として名を挙げ、人々に恐れられる。
一時は、長州の晋作、益次郎らとともに行動したりするのだが、
結局、人斬りの本質は変わらず。

明治維新後、彦斎は新政府から危険分子とみなされ、
獄に入れられ、明治4年、38歳の若さで処刑される。
波乱に満ちた人生を終える。

この作者らしい一作で、一気に読み終えてしまう。


by toshi-watanabe | 2016-02-21 09:41 | 読書ノート | Comments(0)