葉室 麟著「草雲雀」を読み終える

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葉室麟の最新作「草雲雀(くさひばり)」を読み終える。
昨年から今年にかけて、「月刊ジェイ・ノベル」に連載され、
ハードカバーとして、最近出版されたばかり。
作家デビューして丸10年、記念すべき作品。

媛野藩(ひめのはん)6万2千石馬廻り役百五十石栗屋家の
三男として生まれた栗屋清吾は28歳で部屋住みの身。
当家嫡男である長兄の嘉一郎の陰でひっそりと暮らしている。
特に学問に優れているところもなかったものの、
城下の若杉道場でも隋一の使い手とされ、
片山流の秘技「磯之波」の伝授を受けていた。
(片山流は居合と剣術の流派)
小心で律義者、特に取り柄がない地味な男として、
養子話も遠のいていたが、女中のみつと深い仲になり、妻とした。
ある晩、庭先で
 ―――りり、りり、りり
と虫の鳴き声、可憐で悲しげな声。
みつが隣室から持ってきたのが、竹籠に入った草雲雀。
村人がお慰めにと届けてきたもの。
二人の愛を象徴して、作品名を「草雲雀」としたのだろう。

同い年で幼馴染の山倉伊八郎が突然清吾に話を持ち掛ける。
伊八郎は勘定方百八十石山倉家の五男で部屋住みの身である。
二人とも若杉道場では師範代を務めている。

藩の筆頭家老を務めていた国東武左衛門には嫡男がいたが、
病身で、若くして他界する(毒殺されたとの話も)。
正室との間にはほかに子供がなく、妾に産ませた男子がいた。
生まれてすぐに他家に養子に出されていた、
その子供が、実は山倉伊八郎。
武左衛門は伊八郎を呼び寄せ、家老職を継がせようと画策。
ここから物語が始まる。
伊八郎は家老職についたら、藩の剣術指南役に取り立てると、
清吾に約束し、手伝いと身の護衛を伊八郎は清吾に頼む。
清吾はみつとの新しい生活(りつが子供を生すこともできる)を
期待して、伊八郎の手助けをする決心をする。

最後は伊八郎、苦難を乗り越えて家老職に。
清吾は人質のようになっていたみつを無事救い出す。

最後の場面、原文をそのまま。

みつは草雲雀を飼っていた。
草雲雀は恋しい相手を思って一晩中、りり、りり、と鳴くのだという。
清吾は草雲雀の鳴き声が耳の中でするのを聞いた。
りり、りり、りり
(わたしも、みつも草雲雀だ)
清吾は、みつを背負う腕に力を込めると、
草雲雀の鳴き声に合わせてしっかりと夜道を歩いていった。

葉室流の感動を与える場面である。


by toshi-watanabe | 2015-11-01 14:33 | 読書ノート | Comments(0)