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葉室 麟著「鬼神の如く(黒田叛臣伝)」を読み終える

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葉室麟さんの新作「鬼神の如く(黒田叛臣伝)」を読み終える。
「小説新潮」に昨年1年間連載された小説で、
この8月に単行本として出版されたばかりである。

北九州市小倉出身の著者にとっては、
黒田家には大いに関心のある題材だったのだろう。
黒田叛臣伝とある通り、黒田家お家騒動の話である。
江戸三大お家騒動の一つとして知られる。
筑前福岡藩の初代藩主、黒田長政と第二代藩主、忠之に仕え、
黒田家筆頭家老として辣腕をふるったのが栗山大膳(利章)、
題名にある鬼神とは、この栗山大膳、小説の主人公である。

通説となっているのは、主君黒田忠之に謀反の疑いありと、
大膳が徳川幕府に訴えを起こし、
幕府による裁決の結果、大膳は乱心したとして陸奥国盛岡藩預かりに、
その一方黒田家は改易を免れたというのが黒田騒動。

著者は、騒動の発端から幕府の採決に至る筋道を、
主人公大膳の視点から綿密に組み立てられている。

黒田官兵衛(如水)を支える藩士の一人に栗山善助(利安)がいたが、
のちに黒田八虎の一人として称されるほど、官兵衛のために尽くした。
大膳はこの善助の子で、福岡藩黒田家初代藩主、黒田長政の信も厚かった。
ところが二代藩主、忠之は凡庸で、大膳を遠ざけてしまう。

当時徳川幕府では、豊臣家恩顧の大名として九州で力を蓄えている
熊本藩の加藤家や福岡藩の黒田家等が気になり、
折りあらば潰してしまおうと虎視眈眈、ついに加藤家はお家断絶の憂き目に。
大膳は黒田家の行く末を心配し対策を考えるものの本心を誰にも明かさず。
黒田家の取り潰しを策する張本人であるかのごとく自ら振る舞い、
主君に謀反の疑いありと直訴する策に出る。

江戸での採決の場面は圧巻、大きな感動を読む者に与える。
幕府の採決では、己が悪者になって、黒田家を救うことになるのだが、
大膳の狙いは理解されていたのではないだろうか。
盛岡藩預かりになったとはいえ、大膳は盛岡藩で丁重に扱われ、
幸せな余生を送っている。
因みに森鴎外が「栗山大膳」をすでに書いている。
この著書でも、大膳は忠義の人物であり、
忠之の暴政を諌めるために起こした事件だとしている。

善助の功績を讃え黒田如水から贈られた
「銀白檀塗合子形兜」は栗山家に長く伝えられ、
現在は「もりおか歴史文化館」が所蔵している。
本年11月21日 ~ 来年1月15日の期間に展示公開。
但し1月2日 ~ 1月7日以外は複製品の展示となる。

一気に読みたくなる、お薦めの一冊である。


by toshi-watanabe | 2015-09-08 14:34 | 読書ノート | Comments(0)