幸田 真音著「天佑なり」を読み終える

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幸田真音さんの著書「天佑なり」を読み終える。
この作品は新聞に掲載された後、2013年6月、単行本として出版。
今回手にしたのは、今年7月、角川文庫・上下巻として出版されたもの。
「だるま蔵相」と呼ばれた人物の生き様が見事に描かれ、
大いなる感動を覚えながら読み終える。

江戸城本丸の屏風の御用絵師、川村庄右衛門守房の子として
是清が生まれたのは嘉永7年(1854)、幼名を和喜次という。
その前年にはペリー提督率いる黒船が浦賀に来ている。
生後すぐ仙台伊達藩の足軽、高橋是忠のもとに養子入り。
高橋家では養祖母の喜代子が養育に当たり、和喜次の面倒を見る。
是清は後々まで、養祖母を敬い、そして面倒を見る。
小姓として寺に住み込み、10歳を迎えるころ、
当時、医師・宣教師として来日していた
ジェームス・カーティス。ヘボン(ヘボン式ローマ字記法を考案)が
横浜居留地に開いていたヘボン塾に通い始める。
13歳目前の慶応3年(1867)(明治維新の前年に当たる)、
外輪船コロラド号に乗船して横浜港を出発、サンフランシスコへ向かう。

これから是清のすさまじい人生が始まることに。
米国人家庭で下働きをしながら実践的な英語を身に着け、
その一方では様々な職業については失敗を繰り返す。
英語教師時代、英語を教える時は、言葉より先に握手(shake hands)を教える。
正式の学校教育を受けておらず、インテリではなく実践の人、
数多くの体験から身に着けた発想力、行動力はずばぬけている。
立派な体格で、人を圧倒するような風貌だったようだ。
酒は大好きで、大酒で失敗することも。

功なり高い地位を得て後、
後輩から頼まれて色紙などに書いた言葉が著書の中で紹介されている。

「閑雲野鶴(かんうんやかく)」
大空にゆったりと浮かぶ雲と広い野原で自由に遊ぶ鶴、
なにものにも縛られぬ自由な暮らしを謳歌している。

「心是為常楽」(心は是れ常に楽しみと為す)
心というのは、なにもくよくよ悩み惑うためのものではない。
心は、常に楽しみ、楽しませるためにこそあるものなのだ。
どんな苦難に直面しても、常に人生を楽しめと説いている。
おのれの運を信じ、楽観的に物事を見る、そこから開ける道があると。

是清は日銀総裁、第20代首相の座にも登りつめ、
何と7度の蔵相を担っている。
この作品を読んでいると、政府は財政難に苦しみ、
経済立て直しがうまくゆかない状況は、現在の日本そのものの
ではないかと痛感してしまう。
高橋是清が、その都度乞われて引き受け財政立て直しに
向かう姿には感動させられるし、現在の日本で最も望まれるのは、
第2の高橋是清ではないだろうか。

著者の幸田さんは「あとがき」で書かれている。

高橋是清に強く惹かれ始めたのは今から10年ほど前。
財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会の委員だった頃、
会議の席でふと耳にした官僚の何気ない言葉がきっかけ。
膨れ上がる国の債務問題に頭を悩ます財務省が
海外にも日本国債の買い手を求めようと、
当時初めて積極的のIR(投資家向けの広報)活動を開始した。
「日本国債を海外で売ろうと頑張るなんて、
明治時代の高橋是清以来のことなんですよ」
担当者のそんな言葉は記憶に鮮烈に刻まれた。

執筆中は是清やご家族、周辺の主な登場人物を網羅した
巨大な年表と是清にまつわる資料を仕事部屋の壁一面に貼り、
入手した時折の写真も特大コピーし、何枚も壁に貼り、
まるで是清と暮らしているような感覚を抱いたと書かれている。

最後の蔵相就任はすでに81歳になる頃、予算を無事決着、
任務を果たして退任してすぐのこと、
昭和11年(1936)2月26日の朝は30年ぶりの大雪で、
一面15センチほどの積雪、しんしんとした早朝5時、
反乱兵士約100名が高橋邸に集結。
兵士の銃殺により、高橋是清は81年の生涯を閉じた。
私の生まれる前年に起った二二六事件である。

NHKテレビで、今月22日から5週にわたり、
ドラマ「経世済民の男シリーズ」が放映されるが、
その第1回と第2回は「高橋是清」である。
土曜日夜9時から放送開始です。
脚本はジェームス三木さん。
因みに第3回と第4回は「小林一三」、
最終回は「松永安左エ門」。
興味のある方は是非ご覧ください。



Commented by banban0501 at 2015-08-21 10:47
今日 BSのインフォメーションで
このドラマのことをしりました

娘が興味をもって 録画を頼まれたところですよ

原作本なのでしょうかね?

文庫なので ぜひ 読みたいものです

タイムリーな紹介でした
Commented by toshi-watanabe at 2015-08-21 14:17
banbanさん、
早速コメントいただき有難うございます。
幸田さんの作品をそのままドラマ化されたのかどうかは分かりません。
波乱万丈の高橋是清の一生が見られると思います。
私もドラマを楽しみにしています。
by toshi-watanabe | 2015-08-21 08:56 | 読書ノート | Comments(2)