安住 洋子著「春告げ坂」を読み終える

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安住洋子の著書「春告げ坂」を読み終える。
この作者の作品を読むのは初めてである。
平成11年に「しずり雪」を出して時代小説作家として認められ、
この「春告げ坂」が5作目となる。
寡作の作家である。

サブタイトルに「小石川診療記」とある通り、
江戸時代の「小石川養生所」にまつわる物語。
八代将軍、徳川吉宗が江戸奉行の大岡忠相に命じて
享保の改革の一環として設立されたのが小石川養生所。
町医者の小川笙船が目安箱に貧民救済の訴えを投書したのが、
将軍の目に止まったといわれている。
享保7年12月、小石川御薬園内に小石川養生所が設立され、
肝煎りに笙船が任じられる。
幕末まで140年間、貧民診療施設として続く。
この笙船を主人公に描いたのが、
山本周五郎の「赤ひげ診療譚」。

ところで「春告げ坂」の主人公は、小石川養生所に勤める
若き医師、高橋淳之祐で、所内で診察、治療に当たりながら、
浅草向柳原にある医学館に通って、最新の医学を学ぶ。
高崎で生まれた淳之祐は、2歳の時に父親、結木誠太郎が
上士の身代わりになって切腹。
その後、母親は早世し、姉は若くして後妻に嫁ぐ。
淳之祐は身寄りもなく、故郷を離れて江戸に出、
町医者の高橋宋庵の養子となる。

養生所へは長い長い坂道を登らねばならない。
身寄りがなく、弱い立場に置かれた人間が集まるこの場所で、
淳之祐は日々奮闘する。
看護中間(看護士、介護士のような職)の伊佐次や鉄平、
病人食や洗濯などを担う下働きの女性たちも登場。

たとえ治る見込みがなくとも、罪人であろうとも、
その命は尊いと、淳之介は面倒を見る。
死人を出すと、担当医師の評価が下がるのだが、それも厭わない淳之祐。

当初の目論見とは異なり惨憺たる状況にあった
小石川養生所を、淳之介は見事に活きかえらせる。
評論家の縄田一男氏も称賛する通り、
命の尊厳さを描き切る傑作だろう。


Commented by banban0501 at 2015-04-11 16:27
はじめて聞く作家さんです
私は女性作家の作品が好きなのですが
この時代小説も 史実と重ね合わせることができ
興味をひかれました

また本屋さんで探してみましょう~

上手な紹介で 読みたくなりますよ
Commented by toshi-watanabe at 2015-04-12 08:43
banbanさん、
日記にも書きましたが、この著者の作品を読むのは初めて。
確かな筆力で、テーマも面白いし、大変興味深く読みました。
手に取ってみてください。
Commented by 安住洋子 at 2016-02-27 02:09 x
お読み下さりありがとうございます。
感想も書いて戴きとてもうれしいです。
今後ともよろしくお願いいたします(*^_^*)

安住洋子
Commented by toshi-watanabe at 2016-02-27 08:55
安住洋子 様
コメントをいただき有難うございます。
つたない感想文で恥ずかしい限りですが、
この著書には大変感銘を受けました。
他の作品もぜひ読ませていただこうと思います。
by toshi-watanabe | 2015-04-11 15:28 | 読書ノート | Comments(4)