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幸田 真音著「ナナフシ」を読み終える

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幸田真音の最新作「ナナフシ」を読み終える。
昨年、「オール読物」に連載され、
今回ハードカバーとして文芸春秋より出版。
「ナナフシ」とは七節とか竹節虫とも書かれる昆虫。
細長い体で、その姿は木の枝や葉などと
見間違うほど植物体に擬態する。

主人公の深尾真司は現在50代の半ば。
数年前までは、米国投資銀行の日本法人で、
腕の良いファンドマネージャーとして大活躍。
ところが2008年に米国発の金融危機が起き、
投資銀行の米国本社は政府の支援が受けられず経営破綻。
深尾の勤める日本法人も為すすべもなく破綻、
すっかり顧客に迷惑をかけてしまった部下が自殺。
時を同じくして、最愛の一人娘が
先天性の心臓病が悪化し、あえなく亡くなる。
妻は離婚し、深尾のもとを去ってしまう。

全てを失った深尾はコンビニの雇われ店長として、
一人日々の暮らしを過ごしていたが、
ある日、深夜のコンビニで、彩弓(さゆみ)と名乗る
行き倒れの20代の女性を助ける。
トラブルの種を抱えるのに辟易しながらも、
不思議な昆虫「ナナフシ」のような
細い肢体と切なさを持つ彩弓に、
亡くなった自分の娘の姿を重ね、
それが生きがいであるかのように、彼女の面倒を見ようと決意。
彩弓はバイオリストとなることを夢見ていたが、
病を抱え、右手の神経を失おうとしていた。

実の父親と娘の如く、二人の生活が始まる。
彼女の病の治療を支援するために、
そして彼女の夢をかなえてやるために
深尾は再び金融市場に身を委ねることに。

著者は米国系金融機関でディーラー業務をやられていたので、
その経験に裏付けされた投資銀行の内情が
たいへんよく理解できる。
実の親子のように生活する深尾と彩弓、
赤の他人である二人の思いや感情が
女性らしいきめ細やかな表現で綴られている。

結末は読んでのお楽しみ。



by toshi-watanabe | 2015-03-18 10:01 | 読書ノート | Comments(0)