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葉室 麟著「影踏み鬼」を読む

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葉室麟さんの最新作「影踏み鬼」を読む。
「新撰組 篠原泰之進 日録」とサブテーマがある通り、
篠原泰之進が主人公である。

この作品を読むと、新撰組の同志とは言え、
必ずしも目指すところが一つではなかったのが分かる。

篠原泰之進(たいのしん)は九州久留米の石工の息子だったが、
幼少の頃より武道を好み、久留米城下で
宝蔵院槍術や剣術を学び、さらに良移心当流柔術を修行。
長じて久留米藩家老、有馬右近の中間となり、
安政5年(1858)、右近が江戸藩邸詰めになった折り、
供をして江戸へ出た。
同じ家臣の酒井伝次郎と親しくなり、
久留米の神官、真木和泉の尊王論に影響を受ける。
次第に尊皇攘夷の志を抱くようになる。
北辰一刀流を学んだ加納鷲雄の紹介で、
伊東甲子太郎(かしたろう)を知り、その門人となる。

甲子太郎が新撰組への入隊を決意すると、
泰之進もともに上方へ向かうのだが、
所用ありとして大阪に回り、入隊が遅れる。
「六角獄舎」で石を投げて門番から追われていた
幼い男の子を助けたことから、
母親の萩野という女性と知り合い、次第になさぬ仲になる。

新撰組に入隊した泰之進は、いろいろな事件に巻き込まれて行く。
坂本龍馬や中岡慎太郎との接点も。

伊東甲子太郎、泰之進、伊東を信奉する数人の隊士は
行動が異なり、目指すところも違う方向に進む
近藤や土方の率いる新撰組から袂を分かち分離独立するものの、
甲子太郎は闇討ちを食ってしまう。

泰之進は月に照らされて道に伸びた屋根の影を
踏んで歩きながら、新撰組にいた自分は
やはり、いつの間にか鬼になったのかもしれないと思った。
(ひとの死の影を踏んで歩む鬼だ)
歩きながら泰之進は身の内から震えを感じた。

篠原泰之進は維新後、秦林親(はたしげちか)と名を改める。
新政府に出仕し、大蔵省に入った。
だが、久留米藩が新政府への謀反を疑われた
「久留米藩難事件」で関係者として取り調べられたことなどに
嫌気がさして大蔵省を辞した。
その後は大阪で実業家の道を歩むことに。
そして明治25年4月、偶々東京に出てきて、
銀座通りを歩いていると、
かっての新撰組同士だった斎藤一に声をかけられる。
斎藤と別れた後、通りに面した料理店に入り、
カツレツを注文する。
今まで行方知れずだった萩野が突然登場する。
萩野の息子が英国で洋食を学び、
この店を開いたばかり。
泰之進が遊び相手になっていた松之助も
既に40代、篠原庄太郎と名乗っていると聞き、
泰之進は声を詰まらせる。


by toshi-watanabe | 2015-01-23 08:48 | 読書ノート | Comments(0)