山本 兼一著「信長死すべし」を読み終える

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今年最初の読書ノートである。
山本兼一の著書「信長死すべし」を読み終える。
昨年末に文庫本として初めて角川書店から発行されたが、
すでに2012年6月に単行本として出されている。

直木賞受賞作品「利休にたずねよ」と同じ書き方だが、
本能寺の変までの天正10年のわずか3か月間を
それぞれの登場人物の視線から物語が時系列で進行する。

第1章は「九重の内」と題し、正親町帝の視線で語られる。
織田信長を天下人にしてはならぬと、近衛前久に命じる。
第2章は「勅使来駕」と題し、明智光秀が登場。
さらに「神への階梯」で織田信長、「板挟み」で近衛前久と続く。
第6章は「もう一人の勅使」と題し、再び明智光秀。
光秀は、冷静に信長を見ており、信長の政(まつりごと)により
民が潤い豊かになり、国は活気に満ちてきており、
当時、国を富ませる発想を有しているのは、ただ信長だけであると、
その才覚に光秀は率直に感嘆するものの、信長は帝をないがしろにして、
内裏を排して、己をその上に立ち、神となって国に君臨しようとしていると、
光秀は冷静に考えている。

「祝賀の宴」では安土城での徳川家康が登場。
「狂おしき神」では織田信長。
家康への馳走にと信長は鷹匠の小林家鷹を伴い狩りへ出かける。
鷭(ばん)の群を狙うものの、鷹匠の不手際により、
大事な大鷹の風神が鷭の群の逆襲にあい首の骨を折り、命を落とす。
首を折られて死んだ風神を見つめながら、信長は、
世の中には我が意のままにならぬことがあるのだと感じないわけにはいかず、
弱い者でも、命がけになれば、群をなして強者を倒すーー
将として、常に我を戒めねばならぬ教訓であった。

信長が本能寺で自刃し、一時的に天下人となった形の光秀が
無残な死にいたるところでこの作品は終わる。
わずか3カ月に満たない期間の物語だが、長編作品である。

この文庫本には伊東潤さんが後書き(解説)を書かれている。
伊東さんは山本兼一ファンであり、山本兼一を師匠と仰いでいる。
この作品は「利休をたずねよ」を軽々と超えて見せたと、
大いに評価されている。
さらに、山本兼一の唱える本能寺の変の真相は、
「朝廷黒幕説」だとし、正親町天皇は信長の新国家構想を容認できず、
信長暗殺指令を出したのだろうと書かれている。

初めの部分、読みづらいところもあるが、
読み進むうちに、物語に引き込まれてしまう。
さすがは山本兼一の筆力だと思う。




by toshi-watanabe | 2015-01-18 10:47 | 読書ノート | Comments(0)