葉室 麟著「峠しぐれ」を読み終える

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葉室麟さんの最新作が双葉社から出る。

作品名は「峠しぐれ」である。

岡野藩領内で隣国、結城藩との境にあるのが弁天峠。

弁天峠から岡野城下までは麓の安原宿を経て十八里ほど。

朝霧峠とも呼ばれる、風光明媚な峠で茶店を

営んでいるのが、主人の半平(40歳過ぎ)と

女房の志乃(35、6歳)。

目鼻立ちが整って、ほのかな色気があり、

峠の地名にあやかって「峠の弁天様」と

親しまれているのが志乃で、

店では峠道を登ってきた旅人や地元の人に

茶や団子、それに甘酒などを出している。

支度をするのは亭主の半平の役目。

半平は小柄で寡黙の男で、いつも店の奥にいる。

草鞋なども編んでいる。


のどかな峠には、いろいろ事情のある旅人が通る。

幼い子供3人を連れた一文無しの若い夫婦。

仇を求めて無宿の旅を続ける浪人。

お家の跡継ぎを幕府に認めてもらうために

若君(暗殺の目を逃れるために、実は替え玉の姫君)の

駕籠とともに峠を越える一行、等々。


茶店の夫婦も次第に事件に巻き込まれて行く。

物語の進展とともに二人の前歴が次第に明らかにされる。

半平は結城藩の武士、

そして志乃は同じ藩の家老の奥方であったのが、

ある事情により、藩を飛びだして、諸国流浪の旅に。

元々峠の茶店を営んでいた老夫婦を手伝うようになり、

やがて老夫婦から茶店を引き継ぐ。


結城藩内抗争が始まり、志乃の娘、千春が許婚のいる

岡野藩へ支援を求めて弁天峠にたどり着き、

母と娘は10数年ぶりの再会を果たす。


物語の筋立てが実に巧みで、つい引き込まれ

一気に読み切る。

情景が目に浮かび、一瞬歌舞伎の舞台を見ているような錯覚に陥る。

葉室さんらしい作品の一つである。

by toshi-watanabe | 2014-12-30 09:30 | 読書ノート | Comments(0)