内田 康夫著「還らざる道」を読み終える

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内田康夫さんの「還らざる道」を読み終える。
この作品は2006年に単行本として出版され、
その後2011年に文庫本化されているが、
文春文庫として最近発行された。
著者は特に「道シリーズ」を意識したわけではないが、
他の作品に「喪われた道」、「怪談の道」などもある。

例の如く、ご存じ素人探偵、浅見光彦シリーズの一冊。

岐阜県と長野県の県境に位置する奥矢作湖(おくやはぎこ)の
北岸側で男の死体が発見されたのが事件の発端。
遺体は70代の男性、身元はインテリア会社の代表取締役会長、
瀬戸一弘と判明する。
この男性の死因に疑問を抱いたのが孫娘の雨宮正恵である。
祖父が旅に発つ前日、「人には、それぞれ、帰る場所がある」と、
正枝に呟いた言葉が頭を離れない。
旅の途中に立ち寄ったと思われる土地を訪ね歩き、
愛知県足助町で浅見光彦と偶然出会うことに。
光彦は明智光秀の事を調べている途中であった。
現地で光彦の案内役を買っていたのが、
馬越将人という人物で、足助町に30数年前から住み着き、
今ではすっかり観光名所となっている香嵐渓の
整備に力を尽くしてきた。

個人的なことだが、私の知人にも馬越さんという方がおられ、
珍しい名前だなと常々思っていた。
登場人物、馬越の故郷は、岡山県井原市木之子町で、
彼の父親がこの事件に関係していることが
次第に明らかになる。
光彦は現地に飛び、色々と調査する。

因みに、この木之子町からは「東洋のビール王」と言われた
馬越恭平が出ており、町の三光寺には墓がある。
馬越家は古くからある名家のようだ。

光彦の優れた洞察力と実行力により、
この事件の全容が明らかになって行くのだが、
思わぬ展開で、この物語は幕を閉じる。
この光彦シリーズ、全国各地を巡り、
色々な土地の事が紹介され、
地理的な興味もあり、大変面白く読むことが出来る。
足助町や木之子町の他に浜名湖や伊那街道そして御嶽山の火山噴火事故で
つとに知られるようになった王滝も登場する。
同時に歴史的な事項にも触れているのも興味深い。
実際に行われた植樹祭も物語の中に取り入れられている。

お薦めの一冊である。


by toshi-watanabe | 2014-12-18 14:17 | 読書ノート | Comments(0)