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葉室 麟著「冬姫」を読み終える

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またまた葉室麟さんの作品である。

葉室麟さんの著書「冬姫」を読み終える。
この作品は、2010年から2011年にかけて
「小説すばる」に連載され、2011年12月単行本として
すでに出版されている。
つい最近、集英社文庫として刊行されたものを読む。

織田信長の次女、冬姫がこの物語の主人公である。
信長には数多くの子供がいるが、いずれも側室の子。
信長はまた、自分の子供たちに奇妙な名前を付けている。
嫡男は「奇妙丸(きみょうまる)」(のちの信忠)、
次男が「茶筅丸(ちゃせんまる)」(のちの信雄・のぶかつ)。
三男が「三七丸(さんしちまる)」(のちの信孝)、
そして冬姫の姉の長女が「五徳(ごとく)」(德姫で
のちに徳川信康の正室)。

ところが不思議なことに次女だけは「冬」と名付けられる。
冬の母親は産後の肥立ちが悪く亡くなり、冬は母親の顔を知らない。
亡き母の形見として水晶の数珠を常に首にかけている。
信長の妹、お市の方によく似、大変な美貌の持ち主。
一方、蒲生賢秀の嫡男、蒲生忠三郎賦秀、幼名鶴千代は
人質として織田家に預けられ、冬姫とは幼馴染。
信長は鶴千代の器量を見出し、将来嫡男の信忠に
万一のことがあった時には、この鶴千代に織田家を継がせようと
すら考え、冬姫を娶らせる。

この婚姻をひそかに妬む人物が周りには多く、
色々と危ない目に合うことになる。
陰ひなたに付き添い、冬姫を守護するため登場するのが、
六尺を超えてひと際たくましい大力者の鯰江又蔵と侍女のもず。
もずは女性の姿をしているが、実は男、忍びの者で笛の名手、
笛を吹きながら吹矢を飛ばすことが出来る。

物語の中盤になり、ある事実が明かされる。
それは、伊吹山の南麓にある成菩提院に於いて、
凍てつく寒さの中で生まれた女子が冬と名付けられた。
母親は帰蝶(濃姫)、信長の正室である。
ある事情があって、御台所の濃姫は冬を乳母に預け、
乳母が冬姫を育ててきた。
これはあくまでも著者の仮説に過ぎないのだが。
とても興味深い仮説である。
この作品とは関係ないが、
德姫が長女となっているが、冬姫が長女であったのではと
いう説もある。
信長が娘のなかでは冬姫を一番目にかけていたのは事実らしい。

冬姫の夫、鶴千代はやがて蒲生氏郷と名乗り、
織田軍団のなかでも武勇を誇り、奥州会津藩九十二万石の藩主に。
新たに城を築き、従来の黒川城から若松城に。
ところが氏郷は40歳の若さで病没。
毒殺されたという俗説もある。
淀の方(茶々)や石田三成からは敵対視されていたようだ。

その後の蒲生家は三代続いたものの、嗣子にも恵まれず、
寛永11年(1634)に蒲生家は廃絶となる。
その7年後、蒲生家の行く末を見届けた冬姫は
81歳の生涯を終える。
「心の刃を研いで、いくさをせねばならないのです。」と
語り、戦国時代を生き抜いた姫の物語である。




by toshi-watanabe | 2014-12-11 08:48 | 読書ノート | Comments(0)