葉室 麟著「霖雨」を読み終える

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葉室麟さんの著書「霖雨」を読み終える。
この作品は2年半前に発表されているが、
つい最近、PHP文芸文庫として出された。

作品名の霖雨とは、幾日も降り続く雨のこと。
文庫本の帯には、こう書かれている。
「凛として生きる・・・たとえ雨が降り続こうとも」。
天領の豊後(ぶんご)日田で、咸宜園(かんぎえん)を
主宰する広瀬淡窓と、実家博多屋の家業を継いだ
弟・久兵衛が主人公。
画期的な教育方針を打ち出す淡窓、
商人としてひたむきに生きる久兵衛には
お上の執拗な嫌がらせが続く。
大塩平八郎(中斉)の乱が起きるなど、時代の大きなうねりの中で、
権力の横暴に耐え、清冽な生き方を貫こうとする広瀬兄弟。
諦めず、凛として生きることの大切さを切々と訴える。

目次を列記すると、
 底霧
 雨、䔥々(しょうしょう)
 銀の雨
 小夜時雨(さよしぐれ)
 春驟雨(はるしゅうう)
 降りしきる
 朝霧
 恵み雨
 雨、上がる
 天が泣く

時代は江戸時代の終わり、天保4年(1833)
春浅い九州は豊後の国、日田の里で、
朝霧の中、広瀬淡窓が目覚めるところから物語は始まる。
淡窓が主宰する私塾・咸宜園に男女二人の
入門希望者が訪れる。
広島からやって来た臼井佳一郎と千世の姉弟だというが、
腑に落ちないところもある。
この二人が物語の進展に絡んでくる。

書名の「霖雨」という言葉は本書で2度出てくる。
一つをそのまま紹介すると、

しみじみと心中を述べる淡窓に目を向け、
久兵衛はおもむろに口を開いた。
「お教え、肝に銘じます」
「そなたを諭しておるのではない。
 自らに言い聞かせているのだ。
 たとえ霖雨の中にあろうとも進むべき道を
 誤ってはなるまいとな」
「われらは、これより後も雨中を進まねば
 ならぬのでございましょうか」
「それが慈雨となる道であろうが、さて・・・」

本書の巻末に著者・葉室麟さんと現大分県知事の
広瀬勝貞さんとの対談が載っている。
広瀬知事は名物知事だった平松守彦さんの後継者、
現在3期目、そして広瀬久兵衛の子孫である。
広瀬家の家訓などが残されているとのこと。
大変興味深い話題が語られている。

因みに、「咸宜園」は文化2年(1805)日田の地で、
淡窓により創設され、明治30年まで存続した。
身分を問わず入門が許され、全寮制、
高野長英、大村益次郎など多くの人材が巣立って行った。
現在は当時の建物はないが、
史跡として、国の指定を受け一般公開されている。

感動的な幕切れは読み手を引き付け、
素晴らしい作品となっている。

by toshi-watanabe | 2014-11-28 14:13 | 読書ノート | Comments(0)