内田 康夫著「砂冥宮」を読み終える

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内田康夫の浅見光彦シリーズの一作、
「砂冥宮(すなめいきゅう)」を読み終える。
最近、幻冬舎文庫の一冊として出版されたものだが、
すでに2011年に発表されており、新しい作品ではない。
フジテレビの2時間ドラマとして、
2012年4月に放映されているので、
テレビをご覧になられた方もおられるのでは。

著者によれば、泉鏡花の小説「草迷宮」という題名と
その出だしを頭に描きながらこの小説の題名を決められた。
鏡花は「草迷宮」の出だしでこう書かれている。
「三浦の大崩壊(おおくずれ)を、魔所だという。
 葉山一帯の海岸を屏風で劃(くぎ)った、桜山の裾(すそ)が、
 見も馴れぬ獣の如く、洋(わだつみ)へ躍込んだ、
 一方は長者園の浜で、逗子から森戸、葉山をかけて、
 夏向き海水浴の時分(ころ)、人死(ひとじに)のあるのは、
 この辺では此処が多い。」

三浦地方の大地主であり大網元の家だった
長屋門も堂々たる須賀家を浅見が訪ねるところから物語は始まる。
須賀は通常「すが」と濁って読むが、「すか」である。
因みに横須賀は「よこすか」と読む。
浅見は当家の須賀智文と面会する。
智文は77歳、当主を息子に譲り、悠々自適の生活を過ごしている。
ところが智文が石川県の安宅関で殺害され、
浅見は事件に巻き込まれることに。

しばらくして、小松市在住の大脇忠暉という、
これも77歳の男性が、富山県砺波市の庄川峡で殺害される事件が発生。

事件を探るうちに出てくるのが、「内灘闘争」。
1952年朝鮮戦争のため、米軍の砲弾試射場が必要ということで、
石川県内灘村の砂丘が有力候補地となる。
(この砂丘の砂を小説の題名に)
学生や労働組合員を中心にして反対運動を起こす。
これが「内灘闘争」と呼ばれている。
この闘争に加わったのが、当時まだ学生だった須賀と大脇。
内灘闘争に関しては、1963年に、日活映画「非行少女」が
公開されており、和泉雅子が主人公を演じている。
1968年には、五木寛之が小説「内灘夫人」を書いている。
1955年からは、立川基地の拡張に反対して砂川闘争が起こり、
その後長年にわたって闘争が続けられる。

1957年に米軍は内灘から撤収、
現在は内灘町となり、金沢のベッドタウンとして、
町は潤っている。

さて物語は終盤になって、殺害事件の謎が解ける。
それに例の如く、素敵な女性たちが登場する。
歴史と地理を織り交ぜた、楽しい推理小説である。
by toshi-watanabe | 2014-11-12 09:07 | 読書ノート | Comments(0)