山本 兼一著「心中しぐれ吉原」を読み終える

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最近単行本として出版された、
山本兼一の「心中しぐれ吉原」を読み終える。
この作品は、2008年から2009年にかけて雑誌に連載されたもの。
今回、大幅に加筆訂正されてハードカバーで出された。

江戸時代の話だが、どちらかと言えば恋愛小説である。
主人公の文七と平十郎は幼なじみで赤坂の貧乏長屋で
一緒に育った。
それから時代は移り、二人とも蔵前の札差(ふださし)となり、
文七は大口屋、平十郎は坂倉屋、それぞれの主に。
札差の仕事の根っこは、幕府の旗本、御家人が受け取る
蔵米の受け取り代行にある。
浅草の大川沿いには、一番から八番までの船入堀が
櫛の歯のように並んでいて、そこに五十四棟の
巨大な米蔵が立ち並んでる。
蔵には四十万石から五十万石の米が常に貯えられている。
最初はその手間賃が商売だったが、元禄のころから
札差に金を借りる武家が出てきた。
次第にそっちが本業になって、途方もない利益を上げるように。

豊かで平穏に暮らしていた文七に悲劇が訪れる。
池之端仲町の茶屋で、文七最愛の内儀、みつが
役者の極楽屋夢之丞と相対死、無理心中する。
文七にはそれが信じられない、役者にそそのかされたか
あるいは誰かに殺害されたのではとの疑念が頭から離れない。

みつの四十九日を済ませ、文七は平十郎と吉原へ出かける。
亡きみつの事が気になりつつ、
文七は松葉屋の花魁、瀬川とすっかり恋仲になり、
三千両を用意して、瀬川を見受けする。
みつがどうして死んだのか真相が判明したら、
正式の妻にすると、文七は瀬川に約束。

ところが好事魔多し、いいことばかりは続かない。
札差を番頭に譲り、新居で甘い生活を続ける二人のところに
盗賊が夜中に侵入、小判や金目のものを盗まれた上に、
文七は致命的な重傷を負い、さらに屋敷も焼かれてしまう始末。
無事だった瀬川も浅草観音へお参りの折に腹部を刺されたり。

そして、みつの死の真相が分かるのだが、
二人は小舟に乗って、物語は終わりを迎える。

人の情を見事に描き切った山本作品の一つである。
by toshi-watanabe | 2014-11-07 14:00 | 読書ノート | Comments(0)