青山 文平著「鬼はもとより」を「読む

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青山文平さんの最新書き下ろし作品「鬼はもとより」を読み終える。
私にとってなじみのない作家である。
著者紹介によれば、青山さんは1948年神奈川県生まれ。
早稲田大学政治経済学部卒業、経済関係の出版社勤務を経て、
フリーライターとなる。
2011年、「白樫の樹の下で」で第18回松本清張賞を受賞、
作家デビューされたとある。

さて「鬼はもとより」だが、読み始めてみるものの、
淡々とした語り口で、どうものめり込めない。
ところがしばらく読み進めるにつれて、急に面白くなり、
すっかり物語にのめり込んでしまう。

江戸の中期、寛延3年(1750)、地方の小藩の武家で
御馬廻りをしていた梶原抄一郎が、藩札掛を命じられる。
藩札とは、その藩内のみで通用する貨幣の代用品で、
当時幕府から藩札の発行が認められていた。
藩の厳しい台所事情を立て直すために、
勘定方に設けられた藩札掛だが、頭の老年の佐島兵右衛門のもと、
抄一郎を含む5人の若者たちは、真剣に藩札の仕組みを学びながら、
藩財政の立て直しに向かう。
数年後見事に立て直したものの、ある年、春から気候が不順、
冷夏となり、厳しい飢饉に遭遇する。
兵右衛門は亡くなり、抄一郎が掛の頭となっていたが、
藩の家老より、実体金に合わない多額の藩札を刷り増しするよう命じられる。
これを拒否して、抄一郎は藩札の版木を抱えて脱藩、江戸へ向かう。
この小藩は結局改易となる憂き目に。

江戸は聖天様に近い浅草山川町の裏店で、
表向きは万年青(おもと)売りの浪人生活を送る抄一郎。
実はフリーの藩札コンサルタント。
家禄三百石の旗本だが無役の小普請、深井藤兵衛と縁がつながり、
藤兵衛は仲介役を果たしてくれ、何かと抄一郎の面倒を見てくれる。
かって小藩で実績を上げた抄一郎の手腕が世間に知れ渡り、
藩札に関する知恵袋と呼ばれるようになる。

北の海に面した島村藩(1万7千石の小藩)が藩札を導入したいと、
抄一郎に相談を持ち掛ける。
宝暦9年(1759)の事である。
改易寸前にまで落ち込んだ島村藩。
自分は鬼になっても島村藩を立ち直らせたいと
立ち上がったのが梶原清明で、元の家老の嫡男。
これからがこの物語の本番である。
結末は読んでのお楽しみ。

読み終えてみると、江戸時代の小藩での物語だが、
現代社会に通じるテーマとも取れる。
国の財政の立て直し、紙幣の発行と流通のコントロール、
産業や流通の育成、国(国民)を豊かにすること、
責任所在の明確化などなど、アベノミクスの事を
ふと思ったりしている。
by toshi-watanabe | 2014-10-30 13:16 | 読書ノート | Comments(0)