葉室 麟著「風花帖」を読み終える

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昨年から今年にかけて雑誌に掲載され、
つい最近単行本として出版されたばかりの
葉室麟さんの新作「風花帖(かざはなじょう)」を読み終えたところ。

九州豊前小倉藩(小笠原藩)では、安永6年(1777年)
犬甘(いぬかい)知寛が家老に就任し藩財政改革を行った。
犬甘の努力により寛政10年(1798年)頃には財政も好転し
銀8千貫の貯蓄が出来るまでに至った。
しかし、反対派の陰謀により享和3年(1803年)失脚し無実の罪により入牢。
非業の死を遂げた。
その後、藩内では重臣間の派閥争いが続くこととなった。
犬甘兵庫派と小笠原出雲派である。
世に「白黒騒動」と言われる。
因みに「白」は小倉城にとどまった城組。
「黒」は小倉城を追われ黒崎城にこもった一派のこと。

こんな藩内の派閥抗争の中、運命のほころびに
翻弄される男女の哀切が描かれたのが、この作品である。
主人公は勘定方、印南(いんなみ)新六、
子供の頃から親戚筋の杉坂監物の屋敷で育てられる。
杉坂家には吉乃(きちの)という娘がいる。
吉乃は女中をお供に新年の挨拶で親戚を訪れた帰り、
神社に立ち寄り、神楽踊りを見物する。
火照った顔を冷やすように木立に一人で入ったところ、
酒に酔った六尺豊かな長身、屈強な若者につかまり、
あわやという場面に、新六が現れて吉乃を救う。
ところが若者はご重役、伊勢平右衛門の嫡男、勘十郎。
御前試合で決着をつけることとなる。

実は普段無口で付き合いのあまりない新六は夢想願流の使い手。
六人の相手を破った後、新六は勘十郎と対決。
段違いの腕前で、新六は勘十郎の木刀を撥ね飛ばし、
尻餅をついた勘十郎の肩を打ち砕いてしまう。
このため新六は江戸詰となり、杉坂屋敷を去る。

三年後新六が江戸から戻る頃に合わせたように、
杉坂吉乃は書院番頭、菅(すが)源太郎と祝言を上げる。

次々と起こる騒動に色々と巻き込まれるが、
吉乃の危機の場にいつも現れ救ってくれるのが新六。
新六には杉坂家から吉乃との夫婦縁組の話が
あったのだが、江戸詰となったため話は取りやめに。
その話を吉乃は知らされていなかった。

物語の終盤、
自ら命を絶ち、事切れながら吉乃の前に現れた新六の
姿を目にして、吉乃はひとり呟くように言う。

「わたくしは今生ではあなたと添えませんでしたが、
 来生では必ずあなたのもとへ参ります」。

その時、澄み切った青空を白雪が舞っていた。
風花という。
雪が積もった山頂から風に乗って雪が平地まで下りてくる。
by toshi-watanabe | 2014-10-15 09:31 | 読書ノート | Comments(0)