山本 兼一著「千両花嫁」を読む

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山本兼一の「とびきり屋見立て帖」シリーズは「オール読物」に連載され、
その後、単行本(あるいは文庫本)として3冊が出版されている。
実は、3冊目の「赤絵そうめん」(すでに読書ノートを書いている)から
読み始め、今回1冊目の「千両花嫁」を読み終える。
書名の「千両花嫁」のほかに、「金蒔絵の蝶」、「皿ねぶり」、「平蜘蛛の釜」、
「今宵の虎徹」、「猿ヶ辻の鬼」、「目利き一万両」の小作品が載っている。

時は幕末、舞台は京である。
京で三本の指に数えられる名代の茶道具商、からふね屋、主・善右衛門の愛娘がゆず、
生まれたばかりの赤子の時に知恩院前で拾われ、からふね屋で育てられたのが真之介。
真之介はめきめきと才を伸ばし25歳にして、二番番頭に、とうさんのゆずと恋仲に。
ところがゆずには茶道家元の若宗匠との縁談が纏まっている。
真之介の願いを善右衛門は頑として拒絶したものの、ちゃんとした大店の主人が
結納金千両を持って筋を通してくれるんなら、話を聞いてもよいとの返事。
一念発起、真之介はからふね屋を辞めて独立、幸運にも恵まれて、
三条木屋町の古い旅籠を買い取り「とびきり屋」を店開き、三条大橋とは
目と鼻の先、人通りの多い好立地に恵まれた土地にある。
そして独立1年後、主・善右衛門の所へ千両箱を持ち込むが、
主は愛娘のゆずを手放す気はさらさらない。
致し方なく、夜陰に紛れて、ゆずを連れ出し、「とびきり屋」で祝言を上げる。
ところが千両箱が押し込み強盗に盗まれるという事件が発生し、
千両箱は壬生浪士・芹沢鴨の手元に。
ゆずが掛け合い、桜湯の見立てを始める。
京の桜か吉野の桜かを10回当てたら千両箱を返すとの約束。

これが「千両花嫁」の内容で、ゆずの両親が認めないまま、
真之介とゆずの新婚生活が始まる。

「金蒔絵の蝶」では、高杉晋作が登場する。
晋作は祇園新橋、井筒屋の芸妓、小梨花に惚れてしまうものの、
室町の呉服問屋、千倉の若旦那がぞっこん惚れ込み、小梨花を妻に娶ることに。
芸妓のまま嫁入りは出来ぬということで、晋作も力を貸す一方、
真之介とゆずがからふね屋にも頼み込み、嫁入り道具一式を揃えて無事嫁入り。
牡丹唐草と揚羽蝶の蒔絵のある素晴らしい道具であるのだが。
ところが千倉の姑が、この嫁入り道具は家風に合わぬと嫁いびり。
事情を知ったゆずは実家に掛け合い、自分のために用意されていた嫁入り道具と
交換することで、無事難問が片付き決着。
さて金蒔絵の蝶の行方は?

「皿ねぶり」では坂本龍馬に勝海舟が登場する。
手代の鶴亀は荷を受け取りに行く途中、侍に声をかけられ、
甲冑を手持ちの30両で買ってしまう。
古い甲冑で、錆びついているところもあり、とても売り物にはなりそうもない代物。
猫があっちこっちの皿をちょっとずつねぶって(なめて)歩く様に、
すぐにお店を移る者をさげすんで呼ぶのを「皿ねぶり」という。
番頭たちは鶴亀を「皿ねぶり」と馬鹿にする。

鎧櫃の内側の反古をはがすと、何と天正の大判が10枚出てくる。
真之介は慌てて、この侍、実は坂本龍馬の元へ品物を届ける。
これが縁で龍馬はとびきり屋の2階を京での宿とし、
時折、海舟を伴って来たりする。
或る晩、龍馬らを狙い4人の侍がとびきり屋を襲う。
真之介と龍馬らは不在だったが、ゆずや番頭、手代、丁稚などが
大変な目に合ってしまう。
この時機転を利かしたのが、「皿ねぶり」の鶴亀で大活躍し難を逃れる。

7作目の作品「目利き一万両」では再び芹沢鴨が登場する。
室町の道具市で真之介は1枚の古い裂を見つけて驚嘆する。
赤子で捨てられていた時に一緒にあったのが守り袋、
その中には金無垢の阿弥陀如来の小さな立像。
守り袋には、トンボをあしらった辻が花染め。
道具市で見つけた裂と守り袋の生地と全く同じもの。
からふね屋や家具屋などを訪ねて聞き込むが裂の出どころは分からず。
そんな折、からふね屋の若旦那、ゆずの兄とその仲間二人が
壬生浪士に捕えられ、助け出すよう真之介は頼まれる。
相手が芹沢鴨、真之介は一万両の賭けを目利きで勝負に。

この作品の終わり、やっと善右衛門が真之介とゆずの夫婦を認めてくれる。
真之介は千両箱をからふね屋に持ち込むことが出来、晴れて夫婦に。

人情の機微というか、山本兼一は登場人物が生き生きとしている姿を
実にうまく描き出している。
特に真之介と見立てでは一枚上手のゆずの夫婦の描き方は絶品。
どの作品単独でも読みごたえがあるが、シリーズとして一つの流れのある
素敵な物語である。
つい引き込まれ、一気に読んでしまう。
今から次の「ええもんひとつ」が楽しみである。
by toshi-watanabe | 2014-10-04 09:13 | 読書ノート | Comments(0)