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葉室 麟著「緋の天空」を読む

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葉室鱗さんの最新作「緋の天空」を読み終える。
「小説すばる」に掲載されたものが今回単行本として出版。
時は奈良時代、光明皇后の一大絵巻である。

導入部分は、奈良の金光明寺(こんこうみょうじ)(のちの東大寺)にて
大仏開眼供養が盛大に行われている場面。
華厳経が説く蓮華蔵世界(れんげぞうせかい)の中心的存在であり、
世界そのものを象徴する盧舎那仏(るしゃなぶつ)(大仏)が完成をみる。
皇太后光明子(こうみょうし)が、夫である聖武太上天皇と
(太上天皇とは前の天皇の事、聖武天皇が45代天皇)
娘である孝謙天皇とともに大仏殿に進む。
(孝謙天皇が46代天皇、女帝)
目の前には、高さが52尺(約16メートル)、
お顔の長さは16尺(約5メートル)の大仏が安置されている。
この時、聖武太上天皇と皇太后は同じ年の52歳、
孝謙天皇は35歳。

物語は皇太后が10歳の時にさかのぼる。
子供の頃は安宿媛(やすかべひめ)と呼ばれていた。
父親は大納言藤原不比等(ふびと)、
母親は県犬養三千代(あがたのいぬかいのみちよ)。
広大な不比等の屋敷には安宿媛と同じ年の首皇子(おびのみこ)が
一緒に住んでおり、三千世が自分の子供のように面倒を見る。
首皇子の母親の宮子は不比等の娘で、安宿媛の異母姉に当たり、
文武天皇との間に生まれたのが首皇子である。
首皇子は将来の帝を約束されている。
ところが母親の宮子は心の病を患い、だれとも会うことなく
ひっそりと離れに隔離されている。

安宿媛はのちに光明子となり、首皇太子の妃となる。
一生独身を貫いた天正天皇(女帝、44代天皇)から譲位され、
首皇太子は聖武天皇に、光明子は皇后に。

その一方で藤原家の権力を奪い取ろうとナンバー2の位置にあるのが、
長屋王で、天武天皇(40代天皇)の孫にあたる。
また長屋王の妻は天正天皇の妹という由緒ある家柄。
長屋王は息子の膳夫(かしわで)を何とか帝に付かせたい
欲望を抱いている。
この膳夫は安宿媛と幼馴染で仲が良い。

多数登場する人物の名前の読み方が難しく、
人物の相関関係がややっこしい。
読むのも一苦労である。
相関図を作成しながら読むこととする。
相関図を見ながら読み進むと、話が理解できる。

不比等が亡くなった後、長屋王は実権を握る。
藤原家の息子たちが続けて不慮の死を遂げたり。
ところが藤原一族から反逆の手が上がり、
長屋王一家は自害する羽目に。
世にいう「長屋王の変」である。

ところがこのために藤原家は呪われ、
世の中には疫病が蔓延する。
世情も不安が高まり、聖武天皇と光明皇后は
仏道にすがる。
その締めくくりとして盧舎那仏の建立を思い立つ。

最初の部分は読み難いところもあるが、
次第に物語に引き込まれてゆく。
病弱な聖武天皇崩御の後、
光明子は皇太后となり、孝謙天皇を擁護し、
力を発揮するものの、
氏族間の争いはその後も続く。
葉室流の素晴らしい作品である。
by toshi-watanabe | 2014-09-08 09:32 | 読書ノート | Comments(0)