葉室 麟著「星火瞬く」を読む

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葉室鱗さんの著書「星火瞬く(せいかまたたく)を読み終える。
時代は幕末、日本が開国に向かって大きなうねりが起きていた頃、
外国人の目から見た当時の日本の姿が描かれている。
従来の歴史物と異なる視点で書かれており、大変興味深い。

主人公というか、「わたし」として登場するのは、
若き少年、アレキサンダー・フォン・シーボルトである。
安政6年(1859)、13歳のアレキサンダー少年は、
63歳になる父親のフィリップ・フランツ・シーボルトに連れられて、
長い船旅を終えて、初めて日本、長崎に上陸する。

フィリップ・シーボルトは30年前、オランダ商館の医師として
6年間、日本に滞在していた。
日本の動植物、地理、歴史を研究するとともに、
塾を開いて多くの蘭医を育成した。
帰国する際に日本の地図を持ち出そうとしたとして
「シーボルト事件」を起こし、日本には再び入国できずだった。

時代が変わり、フィリップは長男のアレキサンダーを伴い、
30年ぶりに懐かしの日本にやってくる。
日本人女性お滝との間に生まれた娘、イネとも再会。
イネはすでに32歳、産科医として活躍している。

翌年、万延元年と年号が変わる。
大老井伊直弼が桜田門外で討たれ、
アメリカ公使館の通訳兼書記ヒュースケンが討たれるなど、
江戸の町も騒然とした状況。

そのまたあくる年は年号が再び変わり、文久元年となる。
この年にシーボルト親子は江戸へ向かう。
フィリップは江戸に、アレキサンダーは横浜にと別々に過ごす事に。
これからの1年間がこの作品の内容である。
特に「わたし」であるアレキサンダーは日に日に移り行く
日本の動きに翻弄されながら、人間として成長して行く。

色々な人物が登場するが、重要な中心人物として描かれているのが
ロシア人のミハイル・バクーニン。
無政府主義者で革命家。
シベリア流刑を脱走し、欧州に逃れるために、
日本、米国を経由する。
アレキサンダーが宿泊している横浜ホテルに
バクーニンも滞在し、バクーニンから大きな影響を受ける。

もう一人、当時外国奉行、35歳の小栗忠順(のちの上野介)
が登場するが、以前から私自身大変関心を持っている人物である。
日米修好通商条約批准書交換の遣米使節(監察)として、
ポーハタン号で渡米、各地で大歓迎を受ける。
米国から大西洋を渡り、世界一周し見聞を広める。
能力を認められ、外国奉行に抜擢される。

明治に入り群馬県倉渕村で余生を暮していた小栗は、
明治新政府から狙われ、斬首されている。
現地には斬首の碑が残されており
倉渕の東善寺には小栗ゆかりの品が展示されている。

帰国の途に就く父親のフィリップを
息子のアレキサンダーが港で見送る場面で
この小説は終わっている。

因みにフィリップは帰国後2年後に亡くなる。
アレキサンダーはイギリス公使館の通訳として雇われた後、
明治政府のお雇い外国人として40年間務める。
日本の外交に貢献したとして、
勲二等瑞宝章を受勲している。
Commented by semineo at 2014-09-06 10:34
まさに読書の秋ですね~
いろいろな本を読まれた詳しい解説で、
読んでみたい気にさせられます。
本のご紹介は有難いです。
Commented by toshi-watanabe at 2014-09-06 14:41
semineoさん、
こんにちは。
最近すっかり読書にはまっています。
偏ったジャンルのものになりますが、
楽しんでいます。
by toshi-watanabe | 2014-09-05 10:33 | 読書ノート | Comments(2)