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藤沢 周平著「静かな木」を読む

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大分前に買い求め、そのままになっていた
藤沢周平の作品「静かな木」を読み終える。

短編集で、「岡安家の犬」、「静かな木」、
そして「偉丈夫」の3篇から成っている。
週刊新潮と小説新潮に平成5年から8年にかけて
連載されたものを、平成10年に単行本として出版される。
著者は平成9年1月に亡くなられているので、
没後1年後に出されたことになる。

藤沢さんは山形県鶴岡市のご出身。
鶴岡は江戸時代、酒井藩庄内藩、
この庄内藩をモデルに、架空の「海坂藩」を設定し、
藤沢作品に度々登場する。
映画化された「蝉しぐれ」などにより、よく知られている。
因みに同じ山形県米沢市の近くで生まれた
井上ひさしは大の藤沢ファンで、
「海坂藩・城下図」を作成してしまう。

「岡安家の犬」

岡安家は海坂藩近習組、十左衛門は隠居の身、
大の犬好き、犬の喧嘩があればどこへでも出かける。
岡安家の当主は孫の甚之丞、ほかに母と妹二人の
5人家族、誰もが犬好き、犬を飼っている。
犬の名前はアカ。

ある時、甚之丞は親友の野地金之助から
犬鍋をやるから喰いに来いと誘われる。
当時野犬狩りと称して、野良犬をとらえて
鍋で煮て喰っていたようである。
久しぶりに喰ったので、「味はどうだ」と聞かれて
「うまいと」答える。
すると、「うまいはずだ。
今喰ったのは、貴様の家のアカだぞ。」
激怒した甚之丞は金之助と
あわや果し合いを。

甚之丞の妹、八寿(やす)は金之助に
嫁入りがすでに決まっているというのに。

「静かな木」

布施孫左衛門は福泉寺の境内に立つ
欅の大木を見て過ごす。
孫左衛門は5年前に隠居し、2年後には還暦を迎える。
総領の権十郎が跡を継いで勘定方に出仕している。
次男の邦之介は間瀬家に婿入りしている。
この邦之介が果し合いをすると聞きつけて、
孫左衛門が一計を案じる。

今回の事件の裏には、
藩内の派閥争いが絡んでいる。

「偉丈夫」

海坂藩初代藩主、政慶公は次男の仲次郎光成を愛し、
死歿するときに、藩から一万石を削って、
仲次郎に与え、幕府の許しを得て支藩とした。
片桐権兵衛の属する海上藩である。

政慶公が没してから70年ほどが過ぎたころ、
本藩と支藩の間に漆木をめぐって
境界争いが生まれる。

権兵衛は六尺に近い巨躯だが、いたって寡黙。
この権兵衛が境界争いの掛け合い役に抜擢される。

いずれも小品の短編だが、きめ細やかな人情が
見事に描写され、物語にひこまれてしまう。
感動を呼ぶ藤沢作品である。
by toshi-watanabe | 2014-09-03 09:39 | 読書ノート | Comments(0)