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内田 康夫著「遺譜」下巻を読む

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すでに書き込んだ上巻の続きである。
ドイツ名家の令嬢で、新進気鋭ヴァイオリニストの
アリシアが、我が名探偵、浅見光彦の手助けにより
無事入手した「フルトヴェングラーの楽譜」を手に、
故国ドイツへ帰る。

この任務を命じた祖母のニーナの強い要望で、
光彦とヴァイオリニストの千恵子も同道することに。
因みに高所恐怖症の光彦は一度も飛行機に乗ったことがなく、
今回初めての海外旅行。

第二次大戦前、ドイツより日本を訪問し、
全国を歓迎と熱狂の渦に巻き込んだ
「ヒトラーユーゲント」。
その盛大な歓迎会の最中に、
ある秘密工作が粛々と仕組まれたいた。
それから70年がたつ。

「フルトヴェングラーの楽譜」は専門家から見ると、
目茶苦茶で、まともな楽譜になっていない。
途中からは、ムソルグスキーの「展覧会の絵」の
プロムナードの部分が繰り返し続く。
少し種明かしをすると、四分音符と八分音符により
構成されており、実はモールス信号となっている。
モールス信号を使ったことのある、アリシアの父親が解読して、
謎が解けてくる。
種明かしの続きになるが、「絵のタイトル」、「画家の名前」、
そして「美術館の名前」の一覧表であることがわかる。

画家の名前をそのまま列記すると、
ベックマン、ブラック、セザンヌ、シャガール、ディックス、ドーミエ、
ゴッホ、カンディンスキー、キルヒナー、クレー、ココシュカ、
ロートレック、マネー、マチス、マルク、モジリアニ、ムンク、
ノルデ、ピカソ、ルノアール。。。。。。

ヒトラーとナチスドイツは近代芸術を身体的・精神的な
病気が表れた「頽廃」であり、道徳から人種的に堕落したものと
決めつけて、「頽廃芸術(エントアルテッテ・クンスト)」と称し、
破棄、焼却を命じる。
ナチスの宣伝省は各地の美術館、コレクター等から没収した
二万点近い絵画をベルリンの倉庫に押し込み、焼却の準備をした。
ところが400点ほどの絵画が、
こっそりと持ち出され、半数がドイツ国内に、
そして残りの半数が日本へ運び込まれた。

下巻の前半はドイツとオーストリア、
そして後半は光彦が日本に帰国してからの話となる。
川崎の登戸研究所も登場する。
戦時中、米国向け風船爆弾の開発や
中國の偽札の印刷にかかわった軍の施設、
今は明治大学生田キャンパスとなっている。
ほとんどの施設は撤去整理されたが、
一棟だけ残り、「平和教育研究所資料館」となっている。

上巻に登場した「フルトヴェングラーの楽譜」を
大事に保管していた丹波篠山の忌部老人は
後事を光彦に託し、96歳の生涯を閉じる。
そして光彦は、ついに「ライヘンバッハ・コレクション」の
保管部署を突き止める。


ほかの作家の皆さんのコメント。

「これで、誰も、浅見光彦が忘れられなくなった。」(西村京太郎)

「浅見光彦との別れは、国民探偵との別れである。
 さようなら、もしもこれが永遠の別れとなるなら。」(森村誠一)

「最後の事件とは正に、サプライズエンディング。
 で、次は浅見光彦最初の事件ですか? 一読者より。」(赤川次郎)
by toshi-watanabe | 2014-08-10 09:57 | 読書ノート | Comments(0)