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山本 兼一著「修羅走る・関ケ原」を読む

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故山本兼一さんの遺作が、単行本として出版される。
「修羅走る・関ケ原」、早速買い求めて、一気に読み終える。
「小説すばる」、2011年1月号から2012年11月号にかけて
連載された作品だが、466ページもの大作。

題名の通り、慶長5年9月15日(1600年10月21日)、
美濃国不破郡関ヶ原での合戦を扱っている。
最初は戸惑うが、読んでいくうちに次第に
横のつながり、時の流れがわかり、物語に引き込まれていく。
それぞれの登場人物の思いや行動が
同時進行で進む。

最初に登場するのが石田三成。
笹尾山の三成本陣では、重臣の島左近、蒲生郷舎たちと
評定を行ったり、それぞれ指示を出したり。
そして土肥市太郎と市次郎の兄弟に特命を与える。

次いで登場するのが徳川家康。
桃配山に葵の紋の陣幕を張り、
幔幕内の床几に家康は腰をおろす。
福島正則のことなどを気にかけたり、
これから始まる合戦に思いをめぐらす。

さらに黒田長政、福島正則、井伊直政。松野重元、宇喜多秀家、
大谷吉継、土肥市太郎、土肥市次郎、竹中重門、島左近、
明石全登、可児才蔵、織田有楽斎、
そして再び家康の登場と、登場人物を中心に、
合戦は進行する。

合戦自体よりも、合戦当事者たちの生きざまというか、
死生観を読者に訴えているように思えてくる。
とにかく読みごたえのある作品である。

最後の劇的な場面は、家康に向かって、
返答次第では家康を討つ覚悟の
福島正則が秀頼のいる大阪城を侵攻すのかどうか、
その意思があるのかどうか問い詰めるところで
物語は終わっている。

巻末に、安部龍太郎さんが、
「修羅の死生観」と題して書かれている。
安部さんと山本さんは年齢が一つ違い、
12年ほど前からは、親しく付き合う間柄。
山本さんが亡くなる半年前の
2013年10月17日、
京都上七軒の「萬春」でワインを飲み、
一条通の「花あかり」というスナックで
カラオケを歌ったのが最後の別れだったようだ。

因みに上記の作品を「小説すばる」に書き終えたあと
山本さんは直ぐに肺の病で入院された。
一度は回復されたものの、昨年末、再度発病。
本年2月不帰の人となった。
by toshi-watanabe | 2014-08-07 09:59 | 読書ノート | Comments(0)

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by toshi-watanabe