折々の記

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葉室 麟著「蜩の記」映画化

愛読している葉室さんの作品が映画化される。
直木賞を受賞した「蜩の記」である。
役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子と
おなじみの顔ぶれが主演。
今年10月4日、東宝系映画館で一般公開される。
予告編が公開されている。
下記のウェブサイトをご覧ください。

 → 映画 蜩の記 公式サイト


下記は以前別のところで書いた読書ノートです。

葉室麟さんの直木賞受賞作「蜩(ひぐらし)の記」を読み終える。
読み手をぐいぐい引き込む、大変すばらしい作品だと思う。
葉室さんは5回、直木賞候補にノミネートされ、
この作品で、ついに直木賞を受賞された。

時は江戸時代、舞台は豊後(ぶんご)の国、羽根(うね)藩と
背景は設定され、物語は進展する。
無論、歴史上実在はしておらず、
現在なら大分県辺りである。
藩主三浦家に仕える、藩士戸田秋谷(しゅうこく)が主人公。

秋谷は羽根藩の江戸藩邸にて用人を務めていた折に、
先代藩主の側室と不義密通し、
それを見咎められて小姓を切り捨てた、
というかどで切腹を申付けられる。
(事実と反していることが後で判明するのだが)

しかし、秋谷は学問に秀で、その頃、三浦家の
家譜の編纂に取り組んでおり、
家譜編纂の中断を恐れた藩主が特別の命を出し、
切腹を10年後に執行することになる。

かって秋谷自ら郡奉行を務めていた山間の村、向山村に、
幽閉され、妻子とともに質素な生活をしながら、
家譜の編纂に取り組む。
周りは百姓が住み、長久寺という寺があるのみ。

そして7年の歳月が流れた頃(残り3年)、
城内で刃傷沙汰を起し羽根藩の奥祐筆、
檀野庄三郎が家老の特別な計らいで助命され、
その代わりに秋谷の家譜編纂の補佐をするとともに、
秋谷の監視役を命じられる。

物語はここから始まる。

庄三郎は秋谷の家族とともに生活し、
家譜編纂の手伝いをするうちに、
次第に秋谷にひかれてゆく。

やがて10年が過ぎ、三浦家代々の家譜の編纂が完成する。
庄三郎は秋谷の娘、薫とめでたく祝言を挙げる。
息子の郁太郎も元服の儀を執り行う。

子供たちの行く末を見届け、
秋谷は切腹のため、長久寺へ向かうところで
物語は終わる。


蜩の記とは、秋谷が家譜編纂を命ぜられて以降、
編纂の傍ら、毎日のことを書き留めた日記である。

「蜩とは?」と、庄三郎の問いに対して、
秋谷は、
「夏がくるとこのあたりはよく蜩が鳴きます。
 とくに秋の気配が近づくと夏が終わるのを
 哀しむかのような鳴き声に聞こえます。
 それがしも来る日一日を懸命に生きる身の上でござれば
 日暮しの意味合いを籠めて名づけました。」

命を区切られた男の凄絶の覚悟、武士の清廉が
見事に描かれた、感動の物語である。  
by toshi-watanabe | 2014-07-20 10:07 | 読書ノート | Comments(0)