山本兼一著「利休の茶杓」を読む

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本年二月、惜しまれて黄泉の世界に旅立った
山本兼一さんの著書である。

最近文芸春秋から山本兼一の「利休の茶杓」が出版される。
2011年から2013年にかけて、「オール読物」に掲載された
六編の作品が一冊にまとめられたものである。

「とびきり屋見立て帖」と副題がついているように、
道具屋の若夫婦、真之介とゆずの物語。
真之介が独立する前に修行していた道具屋の娘がゆず。
二人とも若いながら、なかなかの目利き。
時は幕末、尊王攘夷の激動の渦の中にある京都、
この道具屋夫婦を中心に話は展開する。
新鮮組も登場する。

「よろこび百万両」
銅屋(あかがねや)の大旦那、吉左衛門に頼まれて、
銅屋別邸の蔵にある茶道具などの目録書きをする場面で
物語は始まる。
吉左衛門は茶の湯の数寄者で、その折に、
一つの品を店に並べておいてくれと真之介に手渡す。
堆黄の菓子器で、真之介にも値打ちが判じかねる。
清国から日本に逃げてきた
高僧に話を聞くと、高僧は「堆黄値百万金」と書き、
いずれ故国の子孫が買い戻しに来るまで
大切に保存してほしいと頼まれる。

「みやこ鳥」
桂小五郎が手はずを整え、三条実美公が京の都を離れることに。
その折真之介とともに見送りに出たゆずが小さな風呂敷包みを渡す。
中には短冊と香合の箱。
短冊には「春にあふ心は花の都鳥 のどけき御代のことや問はまし」
古今著聞集の中に出てくる歌である。

「鈴虫」
鈴虫と銘のある茶碗の話。
楽焼の祖長次郎の黒茶碗である。
二代目常慶の黒茶碗、銘・春雷ト云の箱と
入れ替わっているのが判明。

「自在の龍」
同業の桝屋喜右衛門(もともとは武家らしい)から
明珍作の自在の置物を真之介は預かる。
茶の湯家元の若宗匠が龍の置物以外を買い取る。
龍だけは店に飾り、決して売らぬよう頼まれている。
店に飾られた龍の向きが長州藩士らの
連絡の役目を果たすことに。

「ものいわずひとがくる」
楽家十一代の茶碗の話。
これも銅屋吉左衛門に頼まれ店に並べる。
茶の湯の家元の宗匠が十一代による十一個そろった
楽家茶碗を見て、
「こういうええ道具は“ものいわずひとがくる”のや。
 なんの広めもせんでも、自然に人づてに伝わって、
 人がやってくる。 道具そのもの力やな」。
真之介は「ものいわずひとがくる」は丁度十音と、
道具屋の符丁に決める。

そして最後が「利休の茶杓」
種をもらったお礼に、朝顔を咲かせた竹垣の竹を削って
利休は茶杓をつくり、古田織部に贈る。
この茶杓をめぐる物語。

各作品ごとに読んでもよいし、全体を一つの作品と
捉えてもよい。
どれも心温まる、素晴らしい作品である。
by toshi-watanabe | 2014-06-15 16:05 | 読書ノート | Comments(0)